2009/07/29

(ぷちSS)「10日目 雄一観察日記」(舞阪 美咲)



 今日はとっても気持ちよく目が覚めたので、雄一にも同じ気持ちを味わってもらおうと
思いました。
 雄一の家に行くと、ちょうど雄一のお母さんがお仕事に出かけるところでした。
「あら、おはよう、美咲ちゃん。悪いけど、雄一起こしてくれるかな?」
「おはようございます。今日もお仕事なんですよね」
「そうなの。でも、美咲ちゃんや麻美ちゃんがいてくれるから、いつも安心して出かけら
れるわ」
「気にしないでください。雄一もうちのお母さんの手伝いをしてくれてますし、お互い様
ですよ♪」
「ありがとう、美咲ちゃん」
 雄一のお母さんは、私の頭をやさしく撫でてくれました。
「それじゃあ、行ってきます♪」
「行ってらっしゃ~い」
 雄一のお母さんを見送ると、わたしは雄一の部屋に向かいました。



 そうっと扉を開けると、雄一は気持ち良さそうに眠っていました。
「雄一、すごく気持ち良さそう……。でも、目が覚めたらもっと気持ちいいはずだよね」
 わたしは雄一をゆさぶって起こすことにしました。
「ゆういち~、朝だよ~」
 ゆっさゆっさ。
「……」
 起きてくれません。
「ゆういち~、お昼だよ~」
 ゆっさゆっさゆっさ。
「……ぐう」
 起きないどころか、軽くいびきも出ました。むう。
「ゆういち~、夜になっちゃったよ~。早く起きないと朝になっちゃうよ~」
「……って、お前は夜中に起こすんかい!」
 やっと起きてくれました。よかった、えへへ。



「美咲のせいで、ずいぶん寝不足な気分だ……」
 目をしょぼしょぼとこすりながら、雄一が文句を言います。
「大丈夫大丈夫、それは気のせいだから」
 きっぱり。
「そうかあ?」
「もちろんだよ。もしまだ眠たいんだったら、お姫様のキ」
「おおっし、今日も一日がんばろうっ」
 急に立ち上がった雄一は、元気いっぱいでした。



「今日もお天気が気持ちいいねっ」
 お日さまは元気よく働いていて、時々吹いてくる風も気持ちいいです。
「そうだな。毎日毎日こんなに晴れなくてもいいとも思うけどな」
「でも、晴れてくれないと洗濯物が乾かないでしょ?」
 雄一は少し考えて、
「いや、乾燥機があるじゃん」
 と言いました。なんとも夢の無いセリフです。
「確かに乾燥機は便利だけど、自然が一番なんだよ。お日さまのにおいは雄一も好きでしょ」
「そりゃまあな」
「でしょでしょ♪ それに、天気がいいと気分を浮かれてくるもん」
「それは、美咲だけのような気もするけど」
 そうかなあ。そんなことないと思うけど。



「それじゃ、こうしたら雄一も気分が浮かれてくるかな?」



 わたしは雄一の腕をつかむと、胸でぎゅーっと抱え込みました。
 すると、雄一の顔が赤くなってきました。ぽかぽかしてきたのかな?
「だーっ! だからなんでお前はっ」
「……いやなの?」
「くっ、……そ、そういうわけじゃないけど」
「だったら、いいよねっ♪」
 顔を赤くした雄一と、ふたりでいつものように学校に向かいました。



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