2009/07/27

(ぷちSS)「8日目 麻美と美咲」(舞阪 美咲)



 ぴんぽーん、という呼び鈴の音が聞こえたので、朝っぱらから宅配便でも届いたのかと
思ってドアを開けたら、そこにいたのは幼なじみの姉妹だった。
「おはよう、雄一♪」
「おはよう、雄くん」
「おはよう、ふたりとも。えと、今日はふたり揃ってどうしたんですか?」
 後半は麻美さんに聞いた質問だった。
「美咲ちゃんと雄くんはこれから部活で出かけるんでしょ。私も大学まで行く用事がある
から、たまには一緒に行きたいと思って。いいかしら?」
「ああ、そういうことですか。いいですよ、もちろん。ちょっと待っててください。今バッ
グを取ってきますんで」
 俺は階段を駆け上がって部屋の片隅に置いてあるバッグを取ると、階段を駆け下りた。
「お待たせ~。それじゃ行きましょう」
 と言っても、ふたりとも動こうとしない。それどころか、俺の顔をじーっと見つめてい
る。……何かついてるのか?
「雄くん。その格好で行くのは、お姉ちゃんちょっと恥ずかしいかも」
 へ?
 そこで気づいた。俺はパジャマ姿のままだということに。
「ちょ、ちょちょちょっとだけ待っててっ!!」
 俺は再度階段を駆け上がることになった。家の前で美咲が大笑いしている声が、二階ま
で聞こえてきた。



「まったく、雄一はあわてんぼうなんだから」
「うっ、今日に限っては言い返せない……」
 俺と美咲、そして麻美さんは一緒に歩いていた。
 俺と美咲が通っている玉川城南高校と、麻美さんが通っている玉川城西大学は、駅で一
区間しか離れておらず、よっぽど天気が悪くない時以外は、麻美さんは歩いて大学まで通っ
ているらしい。麻美さんいわく、ダイエットも兼ねているの、ということだが、麻美さん
にそんな必要がないのは誰の目にも明らかだった。
「しょうがないわ。雄くん、美咲ちゃんを少しでも待たせたくない気持ちでいっぱいだっ
たんだから」
 そんなことは断じて無いと言える。
「えへへ、そうかな?」
「そうよ。そうに決まってるわ。ね、雄くん?」
「……う、うん」
 んなキラキラした目で聞かれたら、頷かざるをえません。
「ほら、お姉ちゃんの言ったとおりでしょう、美咲ちゃん♪」
「うん! ありがとう、お姉ちゃん☆」
 毎度の事ながら、このシスラブトークはなんとかならないものかなあ。いや、仲が良いの
はいいと思うんだけどさ。
 ちなみに、シスラブってのはシスターラブのことな。シスターと言っても修道女のほうじゃ
なく、姉・妹のほうだ。
 仲の良い姉妹は日本全国たくさんいると思うが、この二人以上に仲良し姉妹はいないんじゃ
ないかと俺は思っている。



「それじゃ、私はこっちだから。雄くん、美咲ちゃんをお願いね」
「はい。わかりました」
「美咲ちゃんも、雄くんに迷惑をかけないようにね」
「わかってるよ、お姉ちゃん」



「「いってらっしゃい♪」」



 舞阪姉妹の声が、きれいに重なった。
 いつもの光景だけど、いつ見てもあったかい気持ちになるのは不思議だな。
 麻美さんの姿が見えなくなるまで、俺たちは手を振って。
「それじゃ、私たちも行こう。雄一♪」
「おう」
 今日も一日、がんばるか。



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