2009/07/21
(ぷちSS)「2日目 黒幕はあなた」(舞阪 美咲)
また美咲にあんな起こし方をされるのはかなわないので、予定よりも35分前に目覚ま
しをセットして眠りについた。
うまくいけば、美咲をビックリさせられるな、ふふふ。と思いながら目を閉じたのだが。
翌朝、つまり今だ。俺は目覚ましの音で目を覚ますことになった。
「なんだ、今日は来ないのか?」
食べたくも無い肩すかしを食った俺は、朝飯を速攻でたいらげると、スポーツバッグを
持って家を出た。
太陽は眩しく、いやでも今が夏だということを思い出させてくれる。
俺は軽く屈伸運動をすると、ゆっくりと走り出した。目指すは美咲の家。
「敏腕マネージャーを迎えに行かないとな」
美咲の家の前に着くと、玄関を掃除している人がいた。美咲の姉、麻美さんだ。
「おはようございます、麻美さん」
「おはよう、雄くん。今日もいい天気ね~」
麻美さんはにこにこと微笑みながらそう言った。
舞阪麻美。美咲のお姉さんで、俺にとっても姉みたいな人だ。昔からお世話になってい
ることもあって、いろいろ頭が上がらない人だったりする。
小さい頃からロングヘアーなんだけど、いつ切ってるんだろう?
髪型は基本はストレートだが、掃除の時は簡単にリボンで結わえている。
「美咲いますか?」
「美咲ちゃんなら、ぐっすり寝てたわよ?」
おいおい、敏腕マネージャーは何してるんだよ。
「どうして知ってるんです」
「だって、起こしに行ったらね、『王子様が来るまで寝るんだもん』って。まったくもう、
可愛いんだから、美咲ちゃんは♪」
なんて妹ラブなお姉ちゃんなんだろうか。
それはさておき、夏休みの部活初日から遅刻するわけにはいかない。
「あの、俺が起こしてもいいですか?」
と麻美さんに言うと、
「もちろんよ。だって、雄くんの他に王子様っていないじゃない♪」
やけに嬉しそうに、いや、楽しそうに麻美さんは笑った。その笑顔は美咲そっくりだ。
「それじゃ、ちょっとお邪魔します」
「は~い。あ、そうそう雄くん」
麻美さんがぱたぱたと駆け寄ってきて、俺の耳元で囁いた。
「あのね、お姫様を起こすのは、王子様の熱~いキッスなのよ♪」
やっぱりあなたが黒幕か。
俺はやれやれと肩をすくめると、舞阪家の玄関をくぐった。
その日の部活は、ぎりぎりで遅刻を免れたとだけ、書いておこう。
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