2007/11/18

(ぷちSS)「去年とは一味違う夏」



��回目はブタベストさんが9月16日に。
その後を引き継ぐ形で、2回目を9月30日に、そして今回の3回目で一応の
完結となりました。
順番にお読みください。
夏はまだまだ、これからですよ?





 勢いよくプールに飛び込むと、水しぶきも盛大に上がった。
 うあ、思いっきり腹打った……。
「おーい、だーいじょーぶー?」
 腹を押さえて苦しむ俺に、楽しげな声と水がかけられる。うおっ、目と鼻と
口に水がっ。
「絶対にっ、それ、脱がしてやるからな」
「うわぁ、襲われちゃう♪」
 だから、なんであいつは楽しげなんだろうか?
 そんなことを思いながら、俺はあいつに向かって泳ぎ始めた。
 ざぶざぶと水をかきながら、あいつに向かって進む。でも、どういうわけか、
あいつは少しも動こうとしない。
 おかしいなと思いつつ、あいつの手を掴むことに成功した、あっさりと。
あ、あれ?
「おめでとう~♪ ぱちぱちぱち☆」
 にこにこと手を叩くあいつ。
「どうして逃げなかったんだ」
 当然の俺の疑問に、あいつは目を伏せて呟いた。
「だって……、本気を出したキミには勝てないなって思ったから。それに……」
「それに?」
 俺の目をみつめるあいつ。
「キミになら、襲われちゃっても……、いいかなって」
「ばっ、バカなこと言うなよな……」
 いつもの冗談だと思いつつも、目をそらしてしまう。
 その瞬間、世界が回転した。



 しこたま水を飲んでしまい、げほげほとむせる俺を指差しながら、けたけたと
あいつは笑っていた。
 俺があいつから目をそらした瞬間に、あいつに足をかけられ、転ばされたのだ。
 不意をつかれたので思いっきり沈んでしまい、かなり水を飲んでしまった。
くそ~。
「まだまだだね~」
 いつの間にやらプールサイドに上がっているあいつ。おいっちにー、などと
言いながらラジオ体操をしている。しかも、いつの間にかTシャツは脱いでいる。
「結果はどうあれ、つかまっちゃったもん。約束は守らなきゃだよ♪」
 変なところで律儀なあいつだった。
「どうして今さらラジオ体操なんだ?」
 と聞くと、キミもやんなよと言うので、俺もプールから上がった。
「だってさ、水に入る前に準備体操するのはお約束でしょ?」
「お約束というよりは一般常識という気がするが」
 先ほど、準備体操もしないでプールに飛び込んでいたことは、この際スルー。
 いつも突飛な言動ばかりだとばかり思われているが、実は一番役に立つことを
言ってたりするんだよなあ……。
 お互い向き合ってラジオ体操というのも、はたから見たら妙な光景だろうが、
ここにはふたりきりなので気にしない。
 ぴょんぴょんと飛んでいると、あいつの特定の部位が気になってしまう。
 むむっ、確かにこの揺れ具合なら、5センチも頷ける……。
「えへへ、どう? おっきくなったでしょ♪」
「ぶっ」
 しまった、気付かれていた!
 そりゃ、目の前であれを見ていたら気付かれもするだろ、俺の馬鹿……。
「…………、…………」
「何よー、黙り込んじゃって。疑ってるの? 別に何も仕込んでないんだから。
……何なら、触ってみる?」
 …………。



 夏休み最後の部活の日。去年とは一味違う夏の日。
 それは、俺たちにとって少しだけ特別で、でもいつもよりもいつもどおりな日。
「ほらほらっ、早くしないと先生たちにあることないこと心配されちゃうよっ♪」
 楽しげなあいつの声に引き寄せられるように、俺は歩き出した。
 結局使わなかったこの箱は、ちゃんと返しておかなきゃならないからな。
 翌日、これが原因でまた先生にからかわれることになるのだが、この時の
舞い上がっていた俺には気付けなかった。
 だって、美咲のあの感触が、俺の頭の中を埋め尽くしていたのだから。






おわり♪



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