2008/01/22

(ぷちSS)「ひなまつり」(FORTUNE ARTERIAL)(悠木 かなで&陽菜)



業務報告~。
SS「ひなまつり」を追加しました。
「FORTUNE ARTERIAL」のヒロイン、悠木 かなで&陽菜のSSです。
上のリンクからでも下のリンクからでも、お好きなほうからどうぞです~。
上はいつものhtmlで、下ははてな仕様になります。





「ひなまつり」(FORTUNE ARTERIAL)(悠木 かなで&陽菜)



 まわりが騒がしくて目が覚めると、かなでさんが仁王立ちしていた。
「あっ、やっと起きたね。こーへーがもう少し起きるのが遅かったら、
これをプレゼントしてあげようと思ってたのに」
 かなでさんは、手に持ったそれをひらひらさせる。
 起きてよかった、と、孝平は溜息をつく。
「で、どうして俺の部屋にいるんですか、かなでさん」
「わたしだけじゃないよ?」
 と言うので、よく見てみると陽菜が何やらテーブルの準備をしていた。
「おはよう、孝平くん」
 にっこり笑う陽菜。
「おはよう、陽菜」
 挨拶を返す俺。
「あー、なんかひいきされてるー。いーないーな。わたしもこーへーに
挨拶してほしいよ」
「……おはようございます、かなでさん」
 俺がそう言うと、かなでさんはにぱぁっと笑って俺の頭をぐりぐり撫でた。



「今日は『ひなまつり』をするよ~」
 かなでさんの言うことは大抵突拍子もないことが多いが、今日も
どうやらそうらしい。
「えーっと、今日は3月3日ではありませんよね?」
「うん、そーだよ」
「じゃあ、どうしてですか」
「わたしがやると決めたから」
 それが理由なのか。つーか、自信たっぷりに言い切られたし。
「ごめんね、孝平くん。お姉ちゃんは言い出したら止まらないから」
 陽菜が俺にだけ聞こえるように小声で話す。
「別に陽菜が謝ることじゃないだろ。まあ、しかたないか」
 テーブルには、陽菜が用意した桃の花、雛あられ、菱餅、白酒といった
雛祭りらしい物でいっぱいだ。
「って、白酒はいいんですか?」
「だいじょうぶ。被告には黙秘する権利が認められているんだから」
 それでいいのか、寮長。つか、誰が被告になるんだか。
「ほんとはね、白ちゃんにお酌してもらって、これがほんとの白酒だね♪
 と言いたかったんだけど、残念ながら断られちゃって」
「ローレル・リングのお仕事があるんだって」
 陽菜がかなでさんの説明をフォローしてくれた。



「それじゃあ、まずは乾杯しよう。かんぱーい!」
「「かんぱーい」」
 いきなり乾杯させられ、しかたなくお猪口の白酒を飲み干す。
「ぷはーっ。五臓六腑に質店抜刀だねぇ~」
 かなでさんが顔を赤くしている。って、早いな、おい。
「お姉ちゃん、それを言うなら七転八倒でしょう?」
 同じく陽菜も顔を桃色に染めている。こっちもか。
「いや、五臓六腑に染み渡る、じゃないのか?」
 どこからつっこんでいいんだかわからないが、とりあえず訂正しておく。
「細かいことはいいっこなし! それじゃあ、ひなまつりのメインイベントを
はじめたいと思いまーっす」
 と言い放つと、かなでさんは陽菜のたわわに実ったふくらみを鷲掴みにした。
「きゃあっ? お、お姉ちゃんいきなり何するの?」
「ふふふ、よいではないかよいではないか」
 悪代官みたいなことを言いながら、かなでさんは両手をわきわきと動かす。
「ちょ、だっ、だめだってば……孝平くん、も、見てるのにぃ~、ぅぁんっ」
 陽菜は抵抗してみせるが、かなでさんはたくみに身体を動かしながら決して
手を離そうとはしない。
「はい、そこまで」
 俺はかなでさんを捕まえると、陽菜から引き剥がした。
「こーへーのいけずー」
「何とでも言ってください。陽菜、大丈夫か」
 陽菜ははぁはぁと息を荒げながら、胸元を押さえている。
「う……うん、ありがとう」
 少し潤んだ目で俺を見つめる陽菜。……少し、どきりとした。



「それで、どうしてあれがメインイベントになるんですか」
 かなでさんを問い詰める俺。
「だって、ひなまつりは女の子の成長を祈る行事なんだもん。だからお姉ちゃんと
してはひなちゃんの成長を確かめようとしただけだもん」
 そんな可愛らしい言い方してもダメです。
「あはは……、まあ、お姉ちゃんのことだから、そんなことだと思ったけど」
 苦笑する陽菜。確かにかなでさんならありえる、というか、なんでも
ありえそうだが。
「それでね、こーへー。ひなちゃんはなんと! 去年よりもおっきく……」
「おおお姉ちゃん! 何言おうとしてるのっ」
 あわてて、かなでの口を押さえる陽菜。
 ほんと、このふたりといると退屈しないな。
 随分と騒々しい『ひなまつり』だけど、こういうのも悪くない。
 そんなことを思いながら、俺は目の前の光景を肴に、白酒を飲むのだった。



 おわり



0 件のコメント:

コメントを投稿