2008/01/24

(ぷちSS)「女の子はエレガントに」(FORTUNE ARTERIAL)(千堂 瑛里華)



業務報告~。
SS「女の子はエレガントに」を追加しました。
「FORTUNE ARTERIAL」のヒロイン、千堂 瑛里華のSSです。
上のリンクからでも下のリンクからでも、お好きなほうからどうぞです~。
上はいつものhtmlで、下ははてな仕様になります。





「女の子はエレガントに」(FORTUNE ARTERIAL)(千堂 瑛里華)



「話があるから、あとで穂坂欅に来て」
 俺と目を合わさないようにして、用件だけを告げて、瑛里華は
去っていった。
「んにゃ? えりりんにしては珍しい感じだね」
「そうだね。なんだか千堂さん、少し顔が赤かったような気が
するけど、孝平くんは何か心当たりあるの?」
 鍋から取り皿に野菜を取り分けながら、陽菜が俺に聞いてくる。
「……いや、さっぱりだ」
 陽菜から皿を受け取り、俺は鍋を攻略にかかった。



 いつものお昼。かなでさんが用意した鍋を、俺、司、かなでさん、
陽菜の4人で囲んでいるところに、瑛里華がやってきて、冒頭の
セリフだけを言ってすぐに去っていったのだ。
 普段の彼女からは考えられない態度。と言うことはつまり、彼女は
普段の状態じゃないということ。
「わ、孝平くんすごい勢いだね」
 がつがつと鍋を片付けていく俺を、陽菜が驚きの目で見つめる。
「たくさん食べるのはいいことだよ。さすがはこーへーだね。わたしの
教育の成果かな」
 かなでさんが自慢げに言う。
「俺にはただ急いでいるだけのように見えるけどな」
 司の言うことは正しかったが、それを肯定するのは恥ずかしいので、
俺は黙々と食事を続けることにした。



 いっぱいになったお腹を撫でながら、俺は穂坂欅を目指した。
 以前、瑛里華に呼び出されたときは、時間がかかりすぎてしまい、
彼女を怒らせてしまった。その時のような二の舞を演じるわけにはいかない。
「今日は、ちゃんと来てくれたのね」
「ああ、もちろんだ」
 枯れ木の下に彼女は立っていた。そばにあるのが枯れ木だからだろうか、
瑛里華の端正な容姿が、より浮き彫りになっているように感じた。
「あのね、この前言ったと思うけど」
 念を押すようにして、彼女は話し始める。
「今時、人の首から血を吸うなんて、エレガントじゃないの」
 瑛里華は、1歩前に出る。
「だから、こうすればいいと思ったのよ」
 俺の顔を、その少し冷たい両手で包み込む。そして、瑛里華は俺に
唇を重ねた。



「……って、いきなり何するんだ?!」
 俺はあわてて瑛里華を突き離そうとしたが、出来なかった。先ほどの
ようにしっかりと顔を抑えられている。
「何って、言わなきゃわからない?」
 潤んだ目を俺を見つめる瑛里華。決してあの状態になっているわけ
じゃないのに、俺の瞳は彼女からそらせない。
「キスをするように血を吸えば、エレガントだなって思ったのよ」
 瑛里華の唇が、再び迫ってくる。
「……俺の血を、吸うつもりなのか」
 俺がそう呟くと、瑛里華は動きを止めた。
「そんなつもりはないわ。これは練習よ」
 練習って、何の練習なんだ。
「ふふ、いいじゃないの、どちらでも。私にとってはどちらもはじめての
経験なんだから」
 瑛里華の唇はやわらかく、あたたかくて。俺の意識は何度も飛ばされ
そうになった。
「孝平は、どうかしら」
 俺のことを孝平と呼ぶ彼女。
「これがはじめてのキス? それとも他の娘と経験済み? 少なくとも
私とのはじめてのキスなのは間違いないわよね」
 俺を質問攻めにする瑛里華。俺はそれには答えず、ただキスを繰り返す。
 ぼーっとする頭で、これはエレガントじゃないなと思ったが、
吸血行為ではないから、構わないと思い直して、濃密な交わりを
繰り返すのだった。






 おわり



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