2005/06/16

おめでとう♪ (ToHeart2)(姫百合珊瑚、姫百合瑠璃、イルファ、ミルファ、シルファ)



業務報告~。
読み物広場に、SS「おめでとう♪」を追加しました。
ToHeart2のヒロイン、姫百合珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんの聖誕祭用のSSです。
上のリンクからでも下のリンクからでも、お好きなほうから
どうぞです~。
上はいつものhtmlで、下ははてな仕様になります。





おめでとう♪(ToHeart2)(姫百合珊瑚、姫百合瑠璃、イルファ、ミルファ、シルファ)



 6月になってから数日が過ぎた。
 季節は春から夏へと移り変わりつつあるものの、梅雨のせいで
どちらともいえない、中途半端な季節でもあった。
「ふぁ~あ……」
 毎晩のように珊瑚ちゃんのお相手をしているので、ここのところは
午後になると眠くてしょうがない。
 どうしてあんなにがんばれるんだろうなあ……。
 一度珊瑚ちゃんに聞いてみたら、
「それはもちろん、好き好きーやから♪」
 と、いつもどおりの笑顔で答えてくれた。
 ま、確かに俺も好きだけどね。
 でも、レベル2の珊瑚ちゃんにはかなわないかも。
 毎晩のゲームでの対戦は、確実に俺の睡眠時間を削っていた。
 運のいいことに、今日の6時限目は自習で、課題はプリント1枚。
これくらいなら、ちょっと仮眠してから始めても十分間に合うよな……。
 ひっきりなしに襲ってくる睡魔を受け入れて、俺は机に突っ伏して
目を閉じた。



…………。



「ちょ、ちょっとみんなぁ~、じゅ、順番だってばぁ~~~……」
 どこかから奇妙な声が聞こえる。
 どこかほおっておけないその声に起こされて顔を上げると、教卓の
上にはプリントがぐちゃぐちゃに乗せられており、その横には委員長の
小牧愛佳が目を回していた。
 どうやら、みんなはすでにプリントを提出して教室から出て行って
いるようだった。
 いつもの光景だなあ……。
 委員ちょには申し訳ないけど、あわてふためく小牧さんを見ている
のは、ハツカネズミがくるくるとまわっているアレを思い出させるので、
おもしろい、というか和むのだった。
「委員ちょ、大丈夫?」
「あ、河野くん。はい~、だいじょぶですよぉ~…」
 目をまわしながら大丈夫だと言われても全然説得力ないんだけど。
 とりあえず、俺は教卓の下に落ちているプリントを集め始めた。
 しかし委員ちょも毎回大変だよな。ほとんどクラスの小間使いみたいな
もんだよな。
 というようなことをプリントを集めながら考えていると、ふと重大な
ことを思い出した。



 やべっ、プリントやってないっ!



「あ、あのさ小牧さん」
「はい?」
「俺、実はまだプリント終わってなかったんだ。だから……」
「?」
「もうちょっとゆっくりプリント集めてくれると助かるんだけど」
「…………ふふっ、わかりました」
 委員ちょは、ほにゃっと微笑むと、プリント集めをゆっくりと再開した。
 俺は集めたプリントの中から適当に1枚取り出すと、さくさくと写し
始めた。
 や、わかってるんだけど、緊急事態ってことで。
 心の中で自分の良心に言い訳をする俺であった。
 そんな俺の様子を見ながら、委員ちょが話しかけてきた。
「そう言えば、河野くんといつも一緒にいる女の子って、妹さん
なんですか?」
 ずるっ
 快調に動いていた手元がくるった。
「あ、ああ、もしかしてこのみのこと? 妹じゃないよ。妹のような感じ
ではあるけど。た、ただの幼なじみだって」
「へ~、そうなんだ~」
「そうそう」
「じゃあ、双子の女の子はどうなんですか?」
 びりっ
「あ」
 力が入ってプリントが少し破れてしまった。
「や、そっちも違うって。ただの友だち。ていうか保護者のような……」
「へぇ~、そうなんだぁ~」
 ニコニコと笑いながら、委員ちょはゆっくりとプリントを集めていく。
 むむむ、反論したいところだけど、今はプリントが最優先だ!
 ガリガリとプリントを書きなぐって、なんとか完成したプリントを
委員ちょに手渡した。
「はい、小牧さん」
 じー。と俺の顔を見つめる委員ちょ。
 む……。
「しょうがない、今回は大目に見てあげようかな。おもしろい河野くんも
見られましたから」
 いたずらが成功した子どものような顔で微笑むと、委員ちょは俺の
プリントを受け取ってくれた。
「そう言えば、さっき私のことを委員ちょって呼びませんでした?」
 ぎくっ
「さ、さあ? 気のせいじゃないかなー」
 俺は雲行きが怪しくなってきたので、そそくさと荷物をまとめると
ダッシュで教室を離れた。
「じゃ、後はよろしく~」
「はい。……妹さんたちと仲良くしてくださいね~?」
 ずるるっ
 俺は危うく階段から転げ落ちそうになった……。



 しかし委員ちょにまで冷やかされるとは……。俺たちってやっぱり
そういう関係に見られてるんだろうか。
 そんなことを考えながらコンピュータ室に行くと、珊瑚ちゃんが部屋から
出てくるところだった。
「あれ? 今日は何もしないんだ」
「あ~貴明。今日からしばらくはまっすぐうちに帰るって、瑠璃ちゃんと
約束してるん」
 今日は荷物を取りに寄っただけらしい。
「でもどうして? 何か用事でもあるの?」
「う~ん、瑠璃ちゃんには口止めされてるから、誰にも言ったらアカンよ?」
 そう言うと、珊瑚ちゃんは俺の耳元に口を寄せてきた。
「 え、俺には言ってもいいの?」
「ええと思う。貴明には口止めされてないから」
 珊瑚ちゃんは手で覆いを作ると、小声で話し始めた。
「実はな~…………」



 珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんがいないので、俺は久しぶりにひとりで帰る
ことになった。
 たまにはこういうのもいいよな。
 とは思うものの、何かが足りないと感じているのも事実だった。
 寂しいけど、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんのお願いだからな。
 そんなことをぼんやりと考えながら家の鍵を鍵穴に差し込むと、
「あれ、開いてる……」
 確かに家を出るときには鍵を閉めて出たので、閉め忘れなんてことは
ないはず。
 合鍵を持ってるのはこのみだけだから、このみが来てるんだろうか。
 ガチャリと玄関のドアを開けて中に入ると。



「おかえりなさいませ、貴明さま!」



 まるで俺が来るのを待ち構えていたかのように、メイドロボの
ミルファがちょこんと座っていた。
「た、ただいま」
 思わず勢いに押されて挨拶を返してしまう。
「あ、貴明様。おかえりなさいませ」
「おかえりなさいです、貴明さん~♪」
 キッチンからはイルファさん、2階からはシルファが降りてきた。
 イルファさんもシルファも、ミルファと同じくメイドロボだ。
 3人は珊瑚ちゃんの家に住んでいるんだけど……。
「突然のことで驚かれているかとは思いますが、まずは中へどうぞ」
 にこりと笑って、イルファさんが俺を促す。
 腕をミルファに掴まれて、かばんをシルファに持たれて、俺は
応接間へと誘われた。



「……と、いうわけなんです」
「はぁ~……」
 イルファさんが煎れてくれたお茶をこくりと飲み干す。
 つまり、珊瑚ちゃん家からしばらく追い出されたので、俺の家に
転がり込んできた、ということらしい。
「でもどうして? 何かミスでもやらかしたとか」
「うちらもいろいろ話してみたけど、心当たり全然ないんですよ。
ね、シルファ」
「うん。いつもどおりだったと思います~」
 ミルファもシルファもさっぱりわからないようだった。
「でも、これは考えようによっては好都合なのかもしれません」
「え、どういうことですか、イルファさん」
「貴明様は、6月16日が何の日か、ご存知ですか?」
 イルファさんが尋ねてくる。
「あ、ああ。……珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんの誕生日、だよね?」
「はい、そうです。実は、瑠璃様たちのお誕生日会は貴明様のお宅で
開きたいと思っていましたから」
 あ、そういうことか。
 その日までうちにいるのなら、飾りつけとか前もって準備できるし。
「じゃあ、しばらくうちに住んでもらうってことでいいかな。
あくまで、お誕生会のセッティング目的ってことで。多分、その頃には
珊瑚ちゃんの家に戻れると思うから」
 俺のその言葉を聞いて、3人の顔が輝いた。
「ありがとうございます、貴明様」
「さっすが貴明さま!」
「うれしいです~」
 3人ともが喜んでくれているようでよかった。
 こっちとしてもそのほうが助かるし。いろいろと、ね。



 その日から16日まで、イルファさんたちとの同居生活がはじまった。
 朝はミルファに起こされ、ごはんはイルファさんが準備してくれて、
その他の家事はシルファが手伝ってくれるという、雄二に言わせれば
『夢のような生活』を送った。
 いくつかハプニングもあったけど、それはまたの機会に。



 そして、誕生日当日。俺は学校が終わると、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんを
俺の家に連れて来た。もちろん誕生日会をするためだ。
 家にはすでにイルファさんたちが誕生日会の準備をして待っていると
いう手はずになっている。
 久しぶりに俺の家に遊びに来れるのが嬉しいのか、珊瑚ちゃんの足取りは
弾んでいる。
 その様子を微笑ましく見ていると、俺の袖を瑠璃ちゃんが引っ張った。
「なに、瑠璃ちゃん」
「あのな、貴明。今日までありがとな」
 珊瑚ちゃんに聞こえないように、小声で呟く瑠璃ちゃん。
「ありがとうって、なにが?」
「イルファたちのこと。どうせ貴明の家に転がり込んでるんやろ?」
「……よくわかったね」
「あったりまえやん。来栖川の研究所に戻ってないっておっちゃんから
聞いてたから、後は貴明の家しかイルファたちの行くとこはあらへんもん」
 そう言われればそうだよな。
「うちらのわがままのせいで、貴明には迷惑かけたから。どうしても先に
謝っておきたかったんや」



『しばらくふたりだけでやりたいことがあるから』



 理由は教えてもらえなかったけど、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんのお願いは
これだった。
 長くても16日までって聞いてたから、多分誕生日に関係すること
だとは思ってたけど。
「別に、俺は何にもしてないよ。俺のほうこそイルファさんたちに家事
とか助けてもらったから、感謝しないといけないぐらいだよ」
「そっか、ならよかった」
 俺たちはにこにこと笑いあった。
 楽しそうに笑う俺たちを見て、
「らぶらぶらぶ~、やね」
 珊瑚ちゃんはうれしそうに笑った。



 うちに到着すると、玄関にはイルファさんたち3人が待っていた。
「「「おかえりなさいませ!!!」」」
「あ~、いっちゃんにみっちゃんに、しっちゃん? みんな久しぶりやな~」
 どうやら珊瑚ちゃんだけは気づいてなかったみたいだ。
「さあ瑠璃様、珊瑚様、こちらへどうぞ」
 イルファさんの案内で、俺たちは誕生日会の会場である応接間へと
移動した。
「うわ~♪」
「す、すごい……」
 テーブルの上には隙間がないくらいにびっしりとごちそうが敷き詰め
られている。
「行くよ、シルファ」
「はい、ミルファ姉さん」
 声を掛け合ったふたりが、いっせいに閉まっていたカーテンを開くと、
そこには



珊瑚様、瑠璃様、お誕生日おめでとうございます



 と書かれた垂れ幕がかかっていた。
 い、いつのまにこんなものまで用意していたんだ?



「わ~、すごいすごい~☆」
 珊瑚ちゃんは大喜びだ。
「うちらの誕生日、覚えててくれたんや、イルファ?」
「はい。貴明様に場所を提供していただきまして、私とミルファと
シルファで準備致しました」
「うちらのご主人さまの誕生日、忘れるわけがないじゃありませんか」
「そうです~。おふたりとも、おめでとうございます~」
 ミルファとシルファも嬉しそうだ。
「でもな、その垂れ幕、ちょっとだけ足らんと思うんや」
 突然、瑠璃ちゃんがよくわからないことを言い出した。
 何か、足りないのか?
「そうそう。はい、瑠璃ちゃん」
 今度は珊瑚ちゃんがかばんから何か巻物のようなものを取り出して、
片方を瑠璃ちゃんに渡す。
「行くよ~瑠璃ちゃん」
「はいっ!」
 掛け声とともに、ふたりは左と右に離れていく。お互いの手に
持たれた巻物のようなものは少しずつ開かれていって、
そこに書かれていたものは。



イルファ、ミルファ、シルファ、お誕生日おめでとう☆



 だった。
 イルファさんたちは、3人とも目をパチクリさせている。
「あ、あの、珊瑚様、瑠璃様、これは……?」
「あんな~、いっちゃんたちの誕生日って今までなかったやん。
もしかして公式には決まってるかもしれへんけど、うちは知らへんし」
「せやからな、うちらと同じ誕生日にしようって、さんちゃんと決めたんや」
「いろいろプレゼントも用意したんやけど、これだけは瑠璃ちゃんと
手作りで作ろうって、そう思ったん」
 珊瑚ちゃんたちが持っている垂れ幕は、決してきれいなものではなかった。
いろんな種類の布を手縫いで縫い合わせていて、お世辞にも上手とはいえない。
 でも、それは既製品のものでは絶対に作り出せない、珊瑚ちゃんと
瑠璃ちゃんの気持ちがこもった垂れ幕となっていた。



「う、うれしいです~……」
「う、うちもほんまにうれしいですよぉ……」
「私たち、きっと涙を流すことが出来たら、今、わんわん泣いていると
思います…」



 3人は肩を震わせている。
 その様子を見て、瑠璃ちゃんも珊瑚ちゃんももらい泣きしそうに
なっていた。
 もちろん、俺も。



 相手のことを思いやる気持ちをみんなが持つことが出来たなら、
きっと、世界はずっとあたたかくなると思う。
 メイドロボだからとか、人間だからとかは関係なく、みんなが幸せに
なれるような、そんな夢のような世界も、いつの日か夢じゃなくなる
のかもしれない。
 イルファさんやミルファやシルファを見ていると、強く、そう思う。
 このあたたかい世界が、いつまでもいつまでも続きますように。
 そんな気持ちを込めて、俺は心からの言葉を贈った。



「珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん、イルファさん、ミルファ、シルファ。
お誕生日おめでとう♪」

































おわり♪


















あとがき



PS2ゲーム「ToHeart2」のSSです。
��月16日は姫百合姉妹のお誕生日ということで書いてみました。
一応、設定としては双子エンド後、になりますね。
公式にはイルファさんたちの誕生日設定はないようなので、少し
補完してみました。
これからも6人は仲良く暮らしていくことでしょう。
それでは、また次の作品で。



��005年6月16日 姫百合珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんの誕生日



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