2005/06/26

(ぷちSS)「がんばれ、瑞穂ちゃん!」 (やるきばこ)



第一話
 ずーーーん……。
「うう、また負けちゃった……」
 僕はショックでテーブルに突っ伏した。
 恵泉女学院に転入してエルダーに選出された頃の、雨がよく降る
季節のことだった。
 僕、宮小路瑞穂は同じ寮に住んでいる周防院奏ちゃんに、夕食後に
「リバーシ」をやりませんかと誘われた。
 いつもは寮に住んでいる全員(幼なじみの御門まりや、一年生の
上岡由佳里ちゃん、それに奏ちゃんと僕の合計4人だ)が
揃って夕食を食べるんだけど、今日は陸上部のミーティングが
あるということで、陸上部のまりやと由佳里ちゃんはまだ
帰ってきていない。
 僕と奏ちゃんはふたりだけで夕食を食べた後、まりやたちを
待っている間にゲームでもしようということになったのだった。



「あ、あのお姉さま…ご、ごめんなさいなのです」
 奏ちゃんが申し訳無さそうに謝ってくる。
「い、いいのよ奏ちゃん。奏ちゃんが悪いわけではないから、
気にしなくてもいいのよ?」
「で、でも。お姉さまのそんなお姿を見ていると、奏、奏ぁ…」
 奏ちゃんは目にうっすらと涙を浮かべている。
 ま、まいったなあ。
 ここはなんとかして奏ちゃんを元気付けないと。
「でも奏ちゃんがこんなにオセロが強いなんて思わなかったわ。
��回ぐらいやったかしら? その4回ともほとんど完敗だったん
ですもの。すごいわ」
「そんなことありませんですよ~。奏よりも、由佳里ちゃんや
まりやお姉さまのほうがお強いんですから」
「え、そ、そうなの?」
 それは初耳だよ…。
「はい。お姉さまがいらっしゃるまでに、何度かまりやお姉さまや
由佳里ちゃんと「リバーシ」で対戦したことはありますが、奏は
いつも負けてましたから…」
 ということは、もしかしてこの寮の中では僕が1番弱いってことに
なるんだろうか。とほほ……。
 「リバーシ」の弱いエルダーってのも、どうにも様にならない
ような気がする……よし。
「奏ちゃん。もう1戦、お願いしてもいいかしら」
「は、はい。奏は構いませんけれども」
 なんとなく、このままではまりやにバカにされてしまうような
気がしていた。何よりも、エルダーとしてちょっと恥ずかしい。
 僕はどういうわけだか、やるきに満ち溢れていた。
「では、いいかしら奏ちゃん」
「はい、お姉さま♪」
 ぱちん、と盤上を打つ音が夕食後の食堂に響くのだった……。



第一話、おわり



あとがき



はい~、あまりにも「リバーシ」の奏ちゃんが強くて勝てないので、
ぷちSSが錬成されました(笑)。
第一話とか書いてますが、奏ちゃんに勝ったら次の話を書く予定です。
しかしほんとに強いよなあ。初戦の相手にしては強すぎなのでは
ないでしょうか……。つか、勝てるのかな?



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