2008/02/14

(ぷちSS)「バレンタインの天国と地獄」(FORTUNE ARTERIAL)



業務報告~。
SS「バレンタインの天国と地獄」を追加しました。
「FORTUNE ARTERIAL」のSSです。
上のリンクからでも下のリンクからでも、お好きなほうからどうぞです~。
上はいつものhtmlで、下ははてな仕様になります。





「バレンタインの天国と地獄」(FORTUNE ARTERIAL)



 キーンコーン、とチャイムが鳴って、午前の授業が終了した。
「孝平くんは、お昼どうするの?」
「俺は、いつものように食堂だけど」
 幼なじみの陽菜にそう答えると、陽菜はにっこりと笑った。
「よかった。それじゃあ、一緒に行こうよ。お姉ちゃんに連れてくるように
頼まれてて」
「ああ、それじゃ行くか」
 陽菜と一緒に教室を出ると、廊下は同じように食堂に向かう生徒でいっぱい
だった。
「うわ、今日はすごいな……」
「そうだね。だって、バレンタインだもん」
 今日は、2月14日。バレンタインデーだ。お菓子会社の陰謀だと言う説も
あるが、バレンタインデーについては、特に悪いイメージは持っていない。
 まあ、今まで特別に嬉しかった思い出もないんだが。
「バレンタインだと、どうして混んでるんだ?」
「鉄人がね、バレンタイン限定で特別にチョコを作ってくれるの。すごく
美味しいんだって。私は食べたことがないんだけど」
「かなでさんが呼んでるってことは、もしかしてそのチョコを手に入れるため?」
 かなでさんのことだ、チョコを食べるためなら手段を選ばないということも
……って、そういやかなでさんは風紀委員だったな。そんなことはしないだろう、
多分。
 と、かなでさんに聞かれたら間違いなく風紀シールをプレゼントされそうな
ことを考えていたら、陽菜がなんとも言えないような表情を浮かべていた。
「どうした? もしかして、当たりとか」
「う、ううん、そうじゃないんだけど……」
 陽菜にしては珍しく、言葉を濁している。なんなんだろうか。
 と思った時には、食堂に着いていた。



「おーい、こーへー、ひなちゃーん、こっちこっち」
 俺たちが食堂に入ると、かなでさんが大きな声で呼んでくれた。
 かなでさんの陣取っているテーブルに行くと、そこには。
「遅いわよ、支倉くん♪」
「こんにちは。支倉先輩、悠木先輩」
 瑛里華と白ちゃんが座っていた。
「今日はバレンタインデーだから、みんなで食べようって、お誘いしてみたんだ。
いつものお茶会の出張版みたいだね」
 かなでさんが満面に笑顔を浮かべて、そう言った。
「そういや、お昼はあまり一緒したことがなかったっけ」
 いつもは、俺、司、陽菜、かなでさんの組み合わせが多い。瑛里華はクラスが、
白ちゃんは学年が違うこともあって、なかなか一緒になる機会はない。
「ふたりとも、お姉ちゃんに付き合わせてしまって、ごめんなさい」
 陽菜が二人に向かって頭を下げる。
「いいのよ、悠木さん。たまには、こうやって一緒にお鍋を囲むのもいいんじゃ
ないかしら。ねえ、白?」
「はい。お誘いいただいて、とっても嬉しいです」
「というわけで、みんなの了解も得たところで、お昼にしようよ。わたし、もう
お腹ぺこぺこだよ~」
 かなでさんのお腹が、くきゅ~と可愛らしい音を立てた。
「もう……お姉ちゃんったら」
 しょうがないなあと、陽菜がイスに座り、かなでさんのためにおかずを鍋から
取る。
「はい、お姉ちゃん」
「ありがとう、ひなちゃん! さっすがわたしのヨメ♪ それじゃ、いただきまーす」
 というかなでさんの言葉で、昼食がはじまった。



「ごちそうさまでした」
 鉄人特製の鍋を、今日も見事に完食した。いつもながらうまいんだけど、
この量はどうにかならないものだろうか。
「やっぱり、男の子は違うわね~」
「支倉先輩、すごいです」
 感心して俺を見つめる瑛里華と白ちゃん。
「お疲れ様、孝平くん」
 陽菜が渡してくれたお水を、ぐいっと飲み干した。まあ、最後に陽菜が鉄人から
麺をもらってきて、即席みそラーメンにしなけりゃ、もっと楽だったんだけどな。
「こーへーはいい子だねー。お姉ちゃんは、そんなこーへーにプレゼントを
あげるよ」
 と言うと、かなでさんは俺の目の前にきれいにラッピングされたものを
差し出した。
「えっと、これは?」
「チョコだよ。不公平にならないように、みんなで一斉に渡そうと思って。
ひなちゃんも持ってきたよね?」
「う、うん。……はい、孝平くん」
 陽菜が恥ずかしそうにしながら、チョコをくれた。
「あ、ありがとう」
 つられて、俺も恥ずかしくなってきた。
「ど、どうぞ、支倉先輩」
 白ちゃんが、顔を真っ赤にしながら、チョコを渡してくれた。
「白ちゃんまで……ありがとう」
 俺がそう言うと、白ちゃんは恥ずかしそうに俯いてしまった
「本当は、生徒会の仕事が終わった後に渡そうと思ってたんだけど……」
 と言いながら、瑛里華がチョコを渡してくれる。
「あ、ありがとう。すごく嬉しいよ」
「そ、そういうことは言わなくていいのよっ」
 顔を真っ赤にして、そっぽを向く瑛里華が、すごく可愛かった。
「……ずいぶん、モテるのね」
 その声に振り向くと、紅瀬さんが立っていた。
「あなたに、あげるわ」
 そっけなく言うと、紅瀬さんはミニサイズのひとくちチョコをくれた。
 真っ赤な包み紙というのが、紅瀬さんらしいというか、なんというか。
 お礼を言う間もなく、紅瀬さんは去っていった。



 今までは、バレンタインデーにチョコをもらったことなんて、まるで覚えが
ないが、今年はどういうわけか5つももらってしまった。
 まわりの男子たちの視線が痛いが、かなでさんが作ってくれた場なので、
大騒ぎになることもなく。
 ありがたい気持ちを抱えて、寮に戻った孝平を待ち受けていたのは、さまざまな
味のチョコとの格闘だった。
 瑛里華は、激甘チョコ。
 白は、きんつば入りのチョコ。
 桐葉は、激辛チョコ。
 かなでは、風紀チョコ。
 陽菜は、みそラーメン風味のチョコ。
 どれも、孝平のお腹にダメージを与えるのに、申し分ない味だったから。






 おわり



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