2006/12/22

「M & W」(夜明け前より瑠璃色な)(ミア・クレメンティス)



業務報告~。
読み物広場に、SS「M & W」を追加しました。
「夜明け前より瑠璃色な」のヒロイン、ミア・クレメンティスのSSです。
上のリンクからでも下のリンクからでも、お好きなほうから
どうぞです~。
上はいつものhtmlで、下ははてな仕様になります。





「M & W」(夜明け前より瑠璃色な)(ミア・クレメンティス)



 からんからん、という音が聞こえたので、わたしはぱたぱたと小走りで
お客様の前へ。
「いらっしゃいませ」
 ぺこりと頭を下げてから、心からの笑顔。それがウェイトレスのたしなみ。
 わたし、ミア・クレメンティスは、アルバイトとして喫茶店で働いています。



「アルバイト?」
「はい。わたし、アルバイト、というものをしてみたいと思います」
 きっかけは、姫さまが月にお戻りになられたことでした。
 姫さまがわたしの背中を押してくださったことで、わたしは今、達哉さんの
いる地球で一緒に暮らしています。
 今までは姫さまの身の回りのお世話や、朝霧家の家事だけに専念して
いればよかったのですが、姫さまがいらっしゃらないので、わたしの仕事は
半分になってしまいました。
 それで、アルバイトをしてみようと達哉さんに相談してみたのです。
「別に、俺たちに気を遣う必要なんてないんだけど。でも、ミアが
そうしたいって言うならいいんじゃないかな」
「でも、ミアちゃん。どこでバイトするつもりなの? ……あ、もしかして、
お兄ちゃんと一緒に左門で働くつもりでしょ」
 にんまりとした笑顔で麻衣さんが言いました。
「違いますよ。達哉さんと一緒に働くというのもすごく魅力的だと
思いますが、この間お買い物の途中で素敵なお店があったのです。
ですから、わたしはそのお店で働いてみようと思っています」
「そっか、ちょっと残念。あれ、お兄ちゃん。なんだか少し寂しそうだよ?」
 麻衣さんが言うように、確かに達哉さんはちょっと元気がなくなった
ようでした。
「あの、ダメでしょうか……」
「い、いや、ミアがそうしたいって言うなら、いいと思うよ」
 そう言って、達哉さんはいつものように笑ってくれました。
 ありがとうございます。やっぱり達哉さんはやさしいですね。



 というわけで、この喫茶店でわたしはウェイトレスとして働いています。
 メイドとウェイトレスという仕事は似ているようでいて、細かなところで
違いがあります。
 わたしは今までメイドとしての訓練しか受けていなかったので、最初は
少し間違いもありましたが、今では楽しく働くことができています。
「お疲れ様、ミアさん。この時間帯はお客様が少ないから、今のうちに
休憩に入ってください」
「あ、はい。ありがとうございます。それでは休憩に入らせていただきますね」
 先輩ウェイトレスの竹内さんが声をかけてくださったので、わたしは休憩を
取ることにしました。
 この『休憩を取る』ということが、わたしにとっては大変でした。
 はじめのころは、あまり疲れていないのにどうして休憩しなければ
いけないのだろうと思っていたのですが、喫茶店や飲食店という業務は、
時間帯によって忙しさが違うのですよね。
 そうとは知らなかったわたしは、初日は大変でした。なんとか忙しさの
ピークは乗り切ったものの、へとへとになってしまいましたから。
 その時、わたしをフォローしてくださったのが竹内さんです。とっても
親切で、物事をてきぱきとこなす様子はわたしも見習いたいと思いました。



 ホールへ戻ると、ちょうどお客様がひとりいらっしゃったところでした。
「あれ、リースさん?」
「……」
 リースリットさんです。わたしと同じ月人だそうですが、あまりお話
したことはありません。
 達哉さんやさやかさんはリースさんととっても仲良しなのですが……。
 リースさんからお返事はありませんでしたが、わたしのほうを
見てくれたので気づかなかったということはないはず。
 ここは、さやかさんのようにがんばってみることにします。
「あ、あのリースさん。今日はどうしたのですか」
「……タツヤが、美味しいコーヒーが飲める店って言うから、来てみた」
「そうなのですか~。こちらのお店のコーヒーは美味しいですよ。
もしかしたら、月の王宮で頂くコーヒーよりも美味しいかもしれませんよ」
「……飲む」
「はい、ありがとうございます。ブレンドでよろしいですか?」
 こくり、と頷くリースさんをカウンターにご案内して、マスターに
注文を伝えました。
 しばらくすると、マスターが出来たよと声をかけてくれたので、
わたしはマスターが淹れてくださったコーヒーをリースさんにお出し
しました。
 リースさんは、少し香りを味わってから、ひとくち。
「……」
「いかがですか、リースさん」
「……悪くない」
「ありがとうございます♪ それでは、ごゆっくり」
 わたしが戻ってくると、竹内さんが近づいてきた。
「あの子、ミアさんのお知り合い?」
「はい、そうです。見た目はちょっと無愛想に見えますけど、喜んで
くれているようです」
「そうなんだ。私はてっきり、コーヒーの味が気に入らなかったのかと
思ったから。ま、私の知ってる人でも見た目は目つきが悪いけど、実は
けっこうやさしい人っているし。そういう人もいるわよね」
「そうですね」
 わたしたちはリースさんに見えないように、こっそりと笑い合いました。



 リースさんが席を立ったので、わたしはお見送りです。
「今日はありがとうございました。また、来てくださいね」
 ぺこりと頭を下げてから、心からの笑顔。
 リースさんは、こくりと頷くと、音も立てずに出て行かれました。
 なんだか、ちょっとだけリースさんと仲良くなれたような気がします。
 これも、ウェイトレスの仕事を許してくれた達哉さんのおかげでしょうか。
 ありがとうございます、達哉さん。
 わたしは心の中で達哉さんにお礼を言うと、ウェイトレスの仕事に
戻るのでした。



 からんからん、という音が聞こえたので、わたしはぱたぱたと小走りで
お客様の前へ。
「いらっしゃいませ」
 ぺこりと頭を下げてから、心からの笑顔。それがウェイトレスのたしなみ。
 わたし、ミア・クレメンティスは、これからもアルバイトとして喫茶店で
働いています。
























おわり



あとがき



PCゲーム「夜明け前より瑠璃色な」のSSです。
えっと、一応ミアルート後ということになるのかな。
特に事件もありませんが、ミアは地球での生活を楽しんでいるようです。
タイトルの意味は、もう少し秘密です。
先輩ウェイトレスさんについては、ノーコメントで(笑)



それでは、また次の作品で。



��006年12月22日 ミアさんのお誕生日♪



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