2005/12/10

ささら先輩の指令(ToHeart2 XRATED)(久寿川ささら)



業務報告~。
読み物広場に、SS「ささら先輩の指令」を追加しました。
ToHeart2 XRATEDのヒロイン、久寿川ささらさんのSSです。
ToHeart2 XRATEDの発売記念のSSになっております。
上のリンクからでも下のリンクからでも、お好きなほうから
どうぞです~。
上はいつものhtmlで、下ははてな仕様になります。





ささら先輩の指令(ToHeart2 XRATED)(久寿川ささら)



 12月になり、布団から出るのがだんだんつらくなってきた。
 親父の海外転勤で両親がこの家を出ていってから、はじめての冬だ。
 今までなら、朝起きてリビングに行けば、お袋がエアコンで部屋を
あたためてくれていたものだけど、今年の冬はそういうわけにはいかない。
 一人暮らしは気楽でいいけど、こういう時は家族がいてくれたほうが
いいって思える。
 このみも時々ではあるが、朝食を作りに来てくれたりするので、口には
出さないけど結構感謝してたりする。
 もちろん、タマ姉にもなんだかんだ言ってお弁当で世話になってたり
するし、クラス委員長の小牧さんにも助けてもらうことはある。
 あー、由真や花梨、瑠璃ちゃんに珊瑚ちゃん、るーこなんかは俺が
お世話してるほうか。
 草壁さんは……唯一、対等の間柄かも。
 こうやって考えると、人ってのはほとんどの場合において、もちつ
もたれつなんだなあって思う。
 そうだ。あの人にもいろいろとお世話になってたっけ……。



「クリスマス委員会?」
「うん。このみのクラスではこのみが選ばれたんだよ~」
 このみはうれしそうにえへへっと笑った。
 いつものように、このみと登校している時のことだった。
 クリスマス委員会。誰が言い出したのか、いつからはじまったのかは
知らないけど、うちの学園には毎年この時期になると発足する委員会が
ある。
 正式にはクリスマスパーティー委員会と言うのだが、長いので
クリスマス委員会という呼び方が定着している。
 内容は、その名が示すとおり、クリスマスパーティーのための委員会で、
それ以上でもそれ以下でもない。
 確か去年は……なり手がなかったので、半自動的に当時副委員長だった
小牧さんが担当してたような。
 クラスからは男女1名ずつが選出されるんだけど、うちのクラスからは
委員長と副委員長が兼任していた。でも、うちのクラスの去年の委員長は
その頃からいいかげんで、結局、小牧さんが2人ぶん働いていたっけ。
「結構大変そうなイメージあるんだけど、このみはうれしそうだな?」
「うん! だって、クリスマスって楽しいでしょ~♪ ゲンジマルだって
うれしくてうちの庭をかけまわったりするし」
 それは、このみが無理矢理引きずり回してるだけだと思うが……。
「だから、すっごく楽しみでありますよ~」
 まあ、ご機嫌なところに水を差すこともないか。
「あら、私も選ばれたのよ。このみとおんなじね」
 そう言って会話に加わってきたのはタマ姉だった。雄二も後ろに
くっついている。
「タマ姉もクリスマス委員なの?」
「ええ。クラスのみんなに選ばれちゃって。私は九条院の大学部に推薦が
決まってるから受験にも影響ないし、せっかくみんなが選んでくれたのを
断るのも悪いから」
「……外面だけはいいんだよな、姉貴は……って、割れる割れるーー!!」
 余計なことを言った雄二に、タマ姉の得意技が炸裂していた。
「そっか~、タマお姉ちゃんもなんだあ」
 このみはさらにうれしそうだ。
「タカくんのクラスは?」
「え、うちのクラスか? まだ決まってないけど……」
 ま、小牧さんは多分確実だろうけど。
 そんなことを考えながら歩いていると、前方に見知った後ろ姿がいる
ことに気が付いた。
「久寿川先輩?」
 俺のつぶやきが聞こえたのだろう、ゆっくり振り返ったその人は、
うちの学園の生徒会長の久寿川ささら先輩だった。
「おはようございます。お久しぶりですね、河野君」
 久寿川先輩は淡々とした口調でそう言った。
 ちょっと冷たいような感じもするかもしれないが、これがこの人に
とっては普通なので、気にすることではない。



 久寿川先輩とは、先月の学園祭の時に顔見知りになった。
 忙しそうな小牧さんの代理や、やはり忙しそうなこのみの代理で
生徒会室に駆け込んだことが何度かあり、その時にいろいろとお世話に
なったのだった。



「先ほどから聞こえていましたが、河野君はクリスマス委員ではないの
ですか?」
「ええ、まだうちのクラスでは決まってませんから」
 どうやら先輩にもさっきの話が聞こえていたらしく、そんなことを
聞いてきた。
「そうですか……では、河野君はクリスマス委員ということで決定ですね」
 ……は?
「ちょ、ちょっと先輩、それってどういう……」
 俺が反論しようとすると、久寿川先輩は俺の目をじーっと見つめてきた。
 う、何なんだ?
「河野君はお忘れですか? あの日の出来事を。私の大切なものを持って
いった代わりに、『何でもします』と言った事をお忘れですか?」
 あの日の?…………あ。
「もしかして、あの……」
 俺は先輩の豊かな胸元をちらっと見る。俺の視線に気づいたのか、
先輩はかすかに恥ずかしそうにしているように、俺には見えた。
「……思い出してくれたようですね。それでは、また後ほど。クリスマス
委員会では私の手伝いをしていただきますから」
 久寿川先輩は、そう言うとさっさと歩いていってしまった。
 後に残されたのは、ショックで呆然とする俺と、突然の展開に唖然と
するこのみたちだった。



 とりあえず予鈴までの時間が無いので、その場で問い詰められることは
なかったけど、昼食時に詳しい話をすることをタマ姉に約束させられて、
俺はやっと解放された。
 しかし、久寿川先輩もみんなの前で言わなくてもいいのに……。



 あれは、学園祭の2日ほど前のことだった。
 どこのクラスも準備の最終段階で、もちろん俺のクラスもてんてこまい
だった。
 俺は手が離せない小牧さんの代わりに生徒会室まで走った。
 ノックもそこそこにガラッと扉を開けて中に入ると、目の前には
ひとりの女子生徒がいた。
 俺はとっさに身体を引いたんだけど相手のほうが驚いてしまい、
よろけて倒れそうになったところを支えたんだ。
 結果的に倒れることはなかったんだけど、ひとつ重大な問題があった。
 俺は、その女子生徒の胸を掴んで、支えてしまっていたのだ。
 それも、こう、なんというか、背中から抱きかかえるような感じで。
 これが、久寿川先輩との出会いだった……。



 あの時、先輩はそれほど取り乱したりはしなかったけど、小さな声で
「きゃっ」
 って言ったのを俺は覚えている。
 間違いなく悪いのは俺なので、これでもかと言わんばかりに謝った。
そしたら久寿川先輩はこう言ったのだ。
「私の言うことを聞いてくれますか? そうすれば許します」
 と。
 それからは、普段どおりの冷淡な感じの喋り方だったので、俺も
あまり引きずらずに先輩と話が出来たので、その場はなんとか事なきを得た。
「つもりだったんだけど……」
 まさか、その時の約束をこんなところで持ち出されるとはなあ。
 ま、約束してしまったのは仕方が無いし、やるしかないか。



 というわけで、俺は次のホームルームで開かれたクリスマス委員の選出で、
半強制的に男子のクリスマス委員に就任した。
 女子のクリスマス委員は、
「そ、そんなぁ~~~」
 多数決による圧倒的な得票数で去年に引き続き、小牧さんが就任していた。
 今年のクリスマスは、なんだかいつもとは少し違ったものになりそうだと、
俺は思った……。













































おわり♪


















あとがき



PCゲーム「ToHeart2 XRATED」のSSです。
「ToHeart2 XRATED」発売記念のSSになってます。
てゆか、ささら先輩を出したかっただけです(わはー
一応、話としては終わってるんですが、内容は次のSSに続きます。
舞台設定は去年の「ヤングアニマルあいらんど」に掲載された
コミカライズ版の後日談という位置づけです。
クリスマス委員会は「ドリマガ」からネタを拝借しました。
現状ではゲームは未プレイなので、細かいツッコミは禁止です(笑)。
それでは、また次の作品で。



��005年12月10日 「ToHeart2 XRATED」発売の翌日(えー



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