2009/04/14

「花見月の夜に」(お試し版)



便宜上、このエントリーのカテゴリは「SS」ですが、二次創作ではないのであしからず。



-----------------------------------------------------------------------------------



 僕は階段をとんとんと下り、姉さんの部屋の扉をノックした。
 コンコン
「……入ってまーす」
 ここはトイレか。
「姉さん。ちょっとコンビニまで行って来るよ。何か買って来るものがあれば」
 扉を開けずに話しかけると、中で「どすん」という物音が聞こえた。何やら重量物でも
落ちたような音だ。
 がちゃり
「とりあえず、お仕置きね」
 姉さんは僕のほっぺたをつねった。
「ひどい……、何も言ってないのに」
 僕はほっぺたを押さえて、姉さんをにらんだ。
「あらあら。アンタが声をかけたから、あたしがベッドから落ちたのよ。ったく、減らず
口だけは一人前なんだから」
 姉さんはそういうと、紙幣を一枚突き出した。
「このイライラを解消するには、何を買ってくるかはわかっているわよね?」
「アイスだろ、それもイチゴ味限定」
「正解♪ お釣りで買い物してもいいけど、残ったらちゃんと返しなさいよ」
 コンビニで一万円札を使いきるのは大変だと思います。
「近いとは言え、夜なんだから車に気をつけなさいよ」
「車なんて、あまり走ってないけどね」
 受け取ったお金を財布にしまいながら、僕は呟く。
 昼間はともかく、夜に車を走らせる人はあまりいない。それぐらいの田舎なのだ、この
あたりは。
「バカね。自動車だけが車じゃないわ。原付も軽車両も車なのよ。ちなみに軽車両は自転
車だけじゃないからね。覚えておきなさい」
「と、姉さんは教習所の教官みたいなことを言った」
「おバカ。あたしは教官なのよ。アンタの免許の試験官はあたしがやってあげるんだから、
今から首を洗って勉強しておきなさい」
 おっほほほ、と、どこかの貴婦人っぽく笑うと、姉さんはベッドに戻っていった。
 実際の話、姉さんは本当に自動車教習所の教官だったりする。性格はともかく、教官と
しては優秀らしい。というのは、姉さんに教わった生徒で免許試験に落ちた人はほとんど
いないということを里衣子(りえこ)さんから聞いたことがあるからだ。
「んじゃ、行って来る」
「行ってらっしゃい。リーコによろしくね♪」
 姉さんは里衣子さんのことを「リーコ」と呼ぶ。漢字だけ見れば、確かにそう読めるん
だけどね。
 僕はにっこりと笑う姉さんに手を振って、扉を閉めた。



------------------------------------------------------------------------------------
以上、お試し版でした。
起承転結で言うと、起でしかないのですが、完成までこぎつけられるといいな。
ただ、こういう半端な出し方をすると、長い期間放置されることが、まれにあるので、
早めに完成させたいですね。



0 件のコメント:

コメントを投稿