2006/06/29

(ぷちSS)「三者三様」(夜明け前より瑠璃色な)



「じゃあ、達哉の部屋で寝ることにするわ」
「そうだな、それがいい」
 リースがフィーナのベッドを使用しているので、フィーナは
どこで眠ればいいのか、という問題に対して、俺とフィーナは
適切な答えを導き出した。が、
「い・け・ま・せ・ん」
 さやか姉さんの声が俺を縛り付ける。
 表情はおだやかで、声もやわらかく、見た目はいつもの姉さんなのに、
この圧倒的な雰囲気はいったい……。
「どうしていけないのかしら」
 敢然と立ち向かうフィーナ。姫の威厳、というよりは女の意地のような
雰囲気がオーラとなって漂っているような気がする。
「年頃の男女が、同じ部屋で一晩過ごすなんて……」
「あら、別にそういうことをするつもりなんてないのだけど」
「そ、そういうこと?」
 麻衣は顔を赤くしながら、ミアは目を回しながら驚く。無理も無い。
「姉さん、俺たちは婚約しているんだ。それでもダメなの?」
「だっ、だめよ。まだ結婚しているわけでもないのに、間違いがあっては
いけないわ」
 間違いも何も、すでに俺たちはそういう関係なのだが、ここで言うのは
適切ではないだろう。
「じゃあ、俺が姉さんの部屋で寝るってことにすればいいのかな」



 一瞬、静まり返る朝霧家のリビング。
「だって、俺と姉さんは従姉同士。間違いなんて起きないだろ?」
「え、えっと、あの……」
 姉さんは突然の展開に着いてこれないようだ。よし、あと一押し……、
「た・つ・や?」
 ゾクゥ!!
 突然、マイナス40度の部屋にほおりこまれたような感覚。それは、
まぎれもなく高貴なる者のみが持つ圧迫感。いや、そんなんじゃないけど。
「わ、私は別に達哉くんなら……」
 ちょっと、姉さん何納得してるんだよ!
「そ、そんなのダメだよ! わたしとお兄ちゃんは、きょ、兄妹なんだから、
お姉ちゃんよりもフィーナさんよりも間違いは起きないと思うけどなあー」
 麻衣まで変なことを言い出した!
 冗談で姉さんを動揺させて、なし崩し的にフィーナといっしょに眠る
作戦だったのだが、どうも選択を誤ったらしい。
 3人の「ヤル気」を呼び覚ましてしまったようだ。
「達哉」
「達哉くん」
「お兄ちゃん」
 じりじりとフィーナが、さやか姉さんが、麻衣が俺に迫ってくる。
 くっ、かくなるうえは!



「これでよかったんだろうか……」
「おん♪」
 ぺろぺろと俺の頬を舐め回すイタリアンズに囲まれながら、俺は長い長い
ため息をついたのだった。
 イタリアンズの小屋に逃げ込んだ俺を、フィーナは許してくれるだろうか。
 どこで間違えたんだろう……。



BADEND(えー



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