2009/01/04

魔法少女リースリット・ノエル 番外編



第7.5話 新年最初の大騒ぎなの?



「あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます、朝霧さん。リースなら、中庭にいますよ」
 新年になって最初の日。さやか姉さんがどうしてもとせがむので、リースを迎えに月人
居住区の礼拝堂までやってきた。
「どうもありがとうございます。あ、エステルさんももしよろしければ、いらっしゃい
ませんか。新年会、というほど大げさなものではないんですが、みんなで集まって
お雑煮を食べる会なんですが」
 毎年、朝霧家と鷹見沢家は揃ってお雑煮を食べる。おせち料理はそれぞれの家庭で
食べるが、お雑煮は揃って食べるのが俺たちの間での決まりごとになっていた。
「お誘いありがとうございます。しかし、私には司祭としての仕事もありますし」
「イタリアンズも、エステルさんに会いたがっているんですけど」
「そ……そうですか……。それなら、少しだけなら」
 と言いながらも、エステルさんは嬉しさを隠しきれない様子だ。
「エステルは、犬に目がない」
 そんなエステルさんを冷ややかな目で見つめ、リースが鋭い一言を放つ。
「くっ、いえ、これは地元の方々との交流を深めるという崇高な使命なのです。月人と
地球人は手を取り合っていかなければなりません」
「おめでとう。タツヤ」
「ん? ああ、あけましておめでとう、リース。フィアッカもおめでとうな」
『おめでとう、達哉。今年もよろしくお願いする』
「みんなでスルーしないでください!」
 エステルさんが真っ赤な顔で怒った。



「ワタシ、いかない」
「ええっ、どうしてさ」
 まさかリースが断るとは思っていなかったので、驚く達哉。
「……サヤカ、ニガテ」
 これはさやか姉さんが嫌いという意味ではなく、あくまで苦手だということだ。さやか
姉さんはリースをとにかく構いたがるので、それがリースには馴染まないのだろう。
「よいではないですか、リース。穂積さんもいじわるしているわけではないのですよ?」
「……それはわかってるけど」
 エステルさんがリースを説得にかかっている。
「それじゃあ、こうしましょう。地球には羽根突き、というお正月の遊びがあると
聞きます。それで勝負をして、リースが勝てば行かなくてもいいです。ただし、私が
勝ったら、おとなしく行くということで、いかがですか」
「……、わかった」
「なあフィアッカ。エステルさんがあんなに一生懸命なのって、もしかして」
『ああ、達哉の思っている通りだろうな。リースのため、ということもあるだろうが、
それよりもイタリアンズに会いたい気持ちが先にあるのだろうなあ』



 かくして、リース対エステルの羽根突き勝負が始まる。
 二人とも月人であり、羽根突きは初心者だと思っていたが、そんなことは彼女たちには
まるで関係がなかった。だって、ふたりは、魔法少女だったのだから。



「フィアッカ、起動」
『了解だ。リースリット』
 胸のペンダントが碧玉色の光を放ちながら形状を変えていく。お馴染みの光景だが、
いつもと違うのはデバイスの形状だ。ちゃんと羽子板形状になっているのは、やはり
ロスト・テクノロジーの成せる技といえよう。
「それでは、こちらも行きますよ!」
 杖デバイスを掲げて、エステルさんが構えを取る。
「ムーンエナジー開放。マジカルロッド戦闘形態」
 リースと同じく、デバイスが形状を変えていく。
「まじかるくるくる、エネルギー充填120%♪」
 楽しそうに、そう、実に楽しそうにデバイスを回しながら、エステルさんは呪文を
唱えていく。って、なんだかどっかで聞いたことあるような……。
「まじかるアクセル、れっつせーっとあーっぷ♪」
 その言葉を放った瞬間、きらきらと月の光(らしきもの)が溢れ出し、エステルさんの
姿を変えていく。
「まじかるエステル! 月夜を切り裂き、ここに降臨♪」
 光が収まると、エステルさんが魔法服を身にまとっていた。
「いかがでしょうか、朝霧さん。こちらのアニメを参考に作ってみたんですけど♪」
 やたらテンション高く、達哉に感想を求めるエステルだが、達哉は目をそらして
合わせようとしない。
「あれ、何かおかしなところでもありましたか?」
 首を傾げるエステルに、フィアッカがため息混じりに答えた。
『なあ、エステルよ。変身するのはいいが、目の前に達哉がいた、ということをよく
考えてみたほうがよいぞ』
「え?」
「まるみえ」
「………………えええええええーーーーーー?????」



 結局、恥ずかしさから力を制御しきれないエステルにリースは完敗し、ほっぺたに
バッテンをつけられ、新年会に参加させられ、さやかに抱きしめられた。






 おわり












 あとがき。



「みなさん、こんばんは。エステル・フリージアです。
 ……新年早々、どうしてこんな目に会わなければならないのでしょうか。
 そもそも、本編ではまだ変身シーンなんてないのに……。
 番外編だからお年玉代わり、だそうですが、納得できません。
 こうなったら、本編ではもっと出番を増やしていただかないと!
 というわけで、今回はこれにて。
 次回は、魔法少女リースリット・ノエル本編でお会いしましょう。
 次回も、エステルマジカルがんばります!」



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