2005/03/26
今日になって
気が付いたけど「水月」において、雪さんに起こされるシーンというのは、
僕にとってものすごく基本になっているような気がします。
というのも、SSを書くたびにこのシーン書いているように思えます。
実際に何度も書いてるんだろうなあ。昨日みたいに日記内にちょこっと
書くときもたまにあるから、いったいどれぐらい書いているのか自分でも
わかりません。
気になる……今度、日記内から埋もれたショートストーリーを発掘して
みよう。
そういうわけで、特に意識しなくても『雪さんに起こされ』シーンは書く
ことができるようになっていました。いつのまにか、すごく自然に(笑)。
土曜日だからというのもありますけど、久しぶりに会社帰りに本屋を
はしごしてきました。
電撃大王で「フタコイオルタ」と「月姫」と「TH2」を読んで、
Gファンタジーでも「TH2」を読んで、それからRUSHの「CLANNAD」も
読んできました。あ、後はアフタヌーンで「げんしけん」と
「女神さまっ」も。
雑誌以外も「こみパ」の5巻をざくっと立ち読み(笑)。
うあ~、こんなに読むのはほんと久しぶりでありますよ~。
「フタコイオルタ」はなんかすごい展開で。てゆーか、主人公がすげえ!
「月姫」は夢魔が出てくるのでアレな内容です(ぉ
大王「TH2」は、このみルートまっしぐら! タマ姉はいよいよ来月号から
かな?
Gファン「TH2」は、委員ちょルートの可能性も?って感じで気になる
ところです。
「げんしけん」は……やっぱ、そろそろ終わるのかな。
「女神さまっ」は、なんだか妖しいセリフが(笑)。
「CLANNAD」は思ったよりもいい感じ。カツサンドっ(笑)。
「こみパ」は、僕は同人活動してるわけじゃない(サークルでイベントに
参加しているという意味ですが)けど、創作活動してる人たちには、少し
心に響くものがあると思う。部数も大事な要素のひとつだけど、好き
だから作るってのが、ねっこにあると思いますのですよ~。
そして、さらに久しぶりにレンタルビデオ屋へ。今日明日はレンタルが
��00円だったので、いろいろ見繕って6本も借りてきてしまいました。
録画分も溜まりまくっているのに大丈夫なんでしょうか(えー
「処女はお姉さまに恋してる」(キャラメルBOX)プレイ中~♪
由佳里ちゃん~♪
ということで、今度はゆかりん目指してがんばります~。
しかし、オフィシャルの人気投票ではゆかりんの順位がかなり下のほう
なのですが、どうしてなんだろう。由佳里ちゃんすごい可愛くていいと
思うのですが。
ハンバーグ食べてる顔もいいですし、怖い話が苦手で瑞穂ちゃんに
一緒にお休みしてくださいと言ってくるのも可愛いですし♪
私信です
★淡色館 (来島あわさん)
03/26 アリス♪ (ウソツキは天使のはじまり)
毒舌好きだったのですね?
気になりますが、まだできません。
「天CHU!」は発売1日前に届いたけど、まだ未開封ですよ……。
★ぷらちな(しろがねさん)
3/26 イリヤスフィール♪ (Fate)
今日もイリヤさまですね。
イリヤといえばタイガー道場……ではなく、やはり凛ルートのあれが心に
めっちゃ刻まれておりますよ……。
金ピカ、コロス…とかマジに思いましたし(えー
2005/03/22
「未来への想いを胸に」(君が望む永遠)(涼宮遙、速瀬水月、涼宮茜)
「おめでとう!」
声高らかに飲み物の入ったグラスを掲げる水月。
は、恥ずかしいよぉ~。
でも、せっかく水月がお祝いしてくれるんだから。
周りの人の視線が気になってたけど、それ以上に水月の気持ちが
嬉しかったから。
「ありがとう、水月」
私もグラスを掲げて、水月のグラスにコツンと挨拶をした。
ここは、柊町のどこかにある喫茶店。
今日は3月22日。
白陵柊に通うようになってから、2回目の私の誕生日だった。
「しかし遙も17歳か~、早いもんだね」
お誕生日用のケーキを切り分けながら水月が言う。
「……な、何が早いのかよくわからないんだけど……」
私は水月が取ってくれたケーキを受け取る。
水月は私の問いかけには答えずに、自分用に少し大きめに切り取った
ケーキを頬張った。
「うん♪ このケーキおいしい~。遙も早く食べてみなよ」
水月が本当においしそうに言うので、私も食べてみることにした。
フォークで一口サイズに切り取って、口の中へ入れる。
あ、ほんとにおいしい。
「でしょ? この店にしてよかったねぇ」
今日は私の誕生日ということで、お祝いをしてくれるという水月に連れられて、
この喫茶店にやってきた。
喫茶店なんだけどケーキの味は絶品、という水月の話だったので来てみた
わけなんだけど、正解だったかな。
でも、よかったと言いつつも、水月は何か落ち着かない様子。???
「どうか、したの?」
「え、何が?」
水月は何のこと?って目で私を見つめる。
「何か気にしてるみたいだから……」
水月は少し微妙な表情を浮かべている。
「あ~、まあ、なんてゆーか、遙をびっくりさせようと思ってたからさ~。うまくいって
よかったかなって」
「それは、確かにびっくりしたけど」
何か水月は隠してるような、そんな感じだったけど、私は気にしないことにした。
だって、水月がお祝いしてくれてるのは事実なんだから。
カランコロン♪
おいしいケーキに舌鼓を打っていると、カウベルの音とともにドアが開いた。
中に入ってきたのは私も水月もよく知っている子だった。
その子に気づいた水月は、先生にイタズラが見つかった小学生のような
表情を浮かべた。
「えへへ。こんにちは、水月先輩♪」
その子は嬉しそうに言うと、私の隣に腰掛けた。
「あ、茜よくわかったわね……」
水月はすごくがっかりしている。
「それはわかりますよ~。大好きな水月先輩のいるところなら、たとえ火の中
水の中。それに、今日はお姉ちゃんの誕生日なんだもん。水月先輩が行き
そうなところは絞りやすかったです」
にこにこしながら茜が答えた。
この子は涼宮茜。私、涼宮遙の3つ違いの妹だ。
「でも、どうして水月は残念そうな顔してるの? 茜にみつかったらまずいことでも
あったの?」
水月はしばらくうなだれていたが、アイスティーをごくごくと一気飲みすると
ようやく落ち着いたのか、話してくれた。
曰く、茜とのちょっとした賭けに負けてしまったために、今度会った時に何でも
好きな物をおごらされる、ということだったみたい。
「よりによって今日なんだ……。遙のためにいつもよりちょっとクオリティの高い
お店にしたのがマズかったかなあ」
え、どういうこと?
「おいし~い♪ ほんとにここのケーキおいしいですね、水月先輩♪」
いつのまにか、茜はケーキを注文していて、それを食べていた。
「だってさ、このお店のケーキは有名なパティシエールが作るほんとにおいしい
ケーキなの。そして、そのおいしさはどこに影響してくるかと言うと」
ようやく、水月の言おうとしていることがわかってきた。
「お金、だね」
水月は元気なく首を縦に振る。
「そ、そのとおり。確かに値段に見合った味なんだけど。3人分となると……
けっこうキツイかも」
そ、そうなんだ……。
「すいませ~ん。追加いいですか~」
茜は容赦なく追加注文をする。
「あああ……」
そしてどんどん力がなくなっていく水月。
「あ、あの、私、自分の分は自分で払うから……」
思わずそう言ったことが、逆に水月に火をつけたようだった。
「それはダメ! 今日は遙のお誕生日なのよ? 遙には喜んでもらいたいもん。
それに、茜とのことも約束だから文句は言えない。きっぱりあきらめるわ」
水月はさっぱりした顔でそう言うと、ケーキをパクパク食べ始めた。
水月のこういうところはほんとにすごいなって思う。
おいしいケーキをいっぱい食べた後の帰り道。
夕日が茜色に染まっていて、すごくきれいだ。
「でもさ、来年はこんなふうに過ごせないかもしれないから、これはこれで楽しい
思い出だよね」
サイフにかなりのダメージを受けた水月がそんなことを言った。
「どういうこと?」
問い返す私。
「だって、来年は遙に彼氏が出来てるかもしれないじゃない?」
ええっ?
「え~、お姉ちゃんに彼氏~? なんか、全然想像できないんだけど」
ううっ、すごく失礼なことを言われてる気がする。
「そんなことないわよ、茜。遙だって普通の女の子なんだから。それに、こないだ
聞いたところによると、好きな男が……」
ちょ、ちょっと水月!
「おっとこれは内緒だった。じゃあ私はこっちだから。また明日ね遙! 茜も
今度会ったときには賭けのリベンジするからね~」
水月は言いたいことだけ言うと、さっさと走っていってしまった。
茜が私の顔を覗き込んで言う。
「好きな人……いるんだ?」
「い、いませんっ」
思わずそう言ったけど、茜はにやにや笑いをやめない。
「別に隠すことないと思うけどね~」
「か、隠してなんかないですっ」
やたら過剰に反応する私がおもしろいのか、茜はにこにこしながら歩いて
いった。
彼氏、かあ。
ふと想像してしまうのは、あの人のこと。
まだお話もしたことがないけど、来年は同じクラスになれたらいいな。
そんなことを考えながら、随分先まで歩いていってしまった茜の後を追いかけた。
もう少しすれば桜の花が咲き、新しい季節がはじまる。
出会いと別れ。春はうれしいことと悲しいことが半分ずつやってくる季節。
来年は、いいことあるといいな。
未来への想いを胸に、私は明日への一歩を踏み出した。
おわり
あとがき
PCゲーム「君が望む永遠」のSSです。
ヒロインの涼宮遙の聖誕祭用です。
今年は書く予定してなかったんですが、なんとなく書いてしまいました。
未来の話はもう書かないと決めていたので、過去の話になりましたが、
なんだか微妙な感じです……。
やはり、ちゃんとプロット立てないとダメだなあ。
それでは、また次の作品で。
��005年3月22日 涼宮遙さんお誕生日♪
2004/08/28
「水面に映る月」(君が望む永遠)
「ほら! 孝之急いで!!」
「……ぜはぁ……ぜはぁ……俺は、もう、だめだ」
「バカ言ってんじゃないわよ、遅れたら一生許さないんだからねっ!」
水月と孝之は走っていた。アテネ行きの飛行機の出発時間まであと少し。
絶対に遅れるわけにはいかなかった。
茜のアテネオリンピック出場が決まった。
私の『テレビで応援するよりも直接現地で茜を応援したい』という気持ちに孝之も賛成
してくれて、ふたりでアテネへ行くことにしたのだ。
私は特に問題もなく仕事の有給休暇を取ることが出来たので苦労はなかったのだが、孝
之は大変だった。
ちょうど大きなプロジェクトが立ち上がりはじめたところで、毎日のように会議の連続。
必死の頼み込みで何とか休みはもらえたものの、課のみんなにはアテネのおみやげを要
求されたらしい。
おまけに、出発の前日――つまり昨日だ――まで、毎日深夜の残業。
さすがの私も、今度ばかりは同情せざるをえない。
でも。
「遅れるわけには……いかないのよっ!」
遅れがちな孝之の荷物もひったくってダッシュする。
ダッシュダッシュダーーーーッシュッッッ!!!
その勢いに押されてか、周りの人は快く私たちに道を譲ってくれた。
やっぱりこういうときは、日頃の行いがいいと得よねっ!
「……水月、女子100メートル走に出場したら、メダルも夢じゃないかもな」
孝之のその呟きは、もちろん水月の耳に届くはずもなく。
あきらめたように溜息をひとつつくと、孝之も水月の後を追うようにダッシュを開始し
た。
…………。……………………。
結局、ダッシュの甲斐あって、何とかふたりはアテネ行きの便に間に合った。
飛行機による長時間の旅を経て、水月と孝之はアテネの地に降り立った。
降り注ぐ太陽の光は、日本とアテネではかなり違うように感じられた。
「うーん、もしかして日本より暑くない?」
「もしかしなくても暑いぞ…」
孝之はすでにダウン寸前のボクサーのようにフラフラしている。
「ほら、シャキっとしなさい。だいたいアンタ、機内でぐっすり寝てたじゃない」
「それはそうだが、だからといってこの暑さに耐えられるかどうかは別物だ」
「いちいちうるさいわね。さあ、まずはホテルにチェックインしましょう」
ぶつぶつとうるさい孝之は相手にせずに、水月はさっさと歩いて行く。
ここでもあきらめたように溜息をつくと、孝之は水月の後に着いていった。
…………。……………………。
結局、ホテルに着いたのは21時を少しまわった頃だった。
ようやく部屋に辿り着いて、水月はベッドに倒れ込んだ。
「つ、疲れたあ…」
「…………」
孝之はというと、水月以上に疲れきっていて声も出ないようだ。
「い、いやぁ、まさか道を間違えるなんてね……」
「…………」
孝之の返事は、ない。
「ちょっと、さっきから黙ってるけど……怒ってるの?」
「……いや、ただ疲れてるだけ。むしろ、水月にまかせっきりにしてた俺が悪いよ」
いつになく殊勝な孝之の言葉に水月は驚き、同時になんかひどく悪いことをして
しまったような気になってきた。
「……えっと! 孝之、喉乾いてるよね。飲み物用意してあげるよ」
水月は元気を出して立ち上がると、ベッドの脇にある冷蔵庫からペットボトル入りの
水を取り出した。
「うーん、よくわかんないから水でいいか…」
冷蔵庫の中にはいろいろな飲み物が入っていたが、ラベルが日本語で書かれて
いないのでさっぱりわからない。
無難なところで『水』を選ぶのは妥当な判断だろう。
「はい、孝之」
しっかり冷やされているペットボトルを孝之に渡し、水月も同じ種類の物を手に取って
キャップを開ける。
ごくっごくっごくっ……。
「…っはぁ、おいしい…」
「ああ、身体中に染み込んでいくのがわかるって感じだな」
思いもよらず水がおいしかったおかげか、孝之も少し元気を取り戻したようだ。
ふと時計を見た孝之は、あっ、という顔をした。
「そうだ水月。準決勝はどうなったんだ?」
……あー!
孝之に言われるまで気が付かなかった。
もう『女子100メートル自由形』の準決勝は終わっているころだ。
スケジュールの都合で予選に間にあわないことはわかっていたが、準決勝には余裕で
見に行ける……はずだった。
しかし、飛行機で空港に着いたところまでは順調だったのだが、そこからホテルまでの
道程で事件は起こった。
道を、間違えたのだ。
水月はしっかりしているようで、はじめての海外ということで緊張していた。
孝之は疲れきっていて、水月の後に着いていくだけだった。
ふたつの悪い偶然が重なり、気が付いたときにはオリンピックの会場とは反対の方角に
かなり進んでしまっていた。
間違いに気づいたときは、時すでに遅し。
やっとの思いで、つい先ほどホテルに到着したというわけだった。
当然、オリンピックの結果など調べている余裕はなかった。
「えーとテレビでやってるかな……」
水月はテレビのリモコンで電源を入れ、次々にチャンネルを変えていく。
当たり前のようだが日本語のニュース番組はないので、画像を見て判断する。
「あ! これかな?」
何度かチャンネルを変えていると、水泳の画面が映った。ちょうど女子100メートルの
結果が放送されているようで、順位表がテレビ画面に表示された。
「あ……」
「お、茜ちゃんトップで準決勝通過してるじゃん!やったな、水月!!」
「うん……」
「どうか、したのか」
茜がトップで準決勝を通過しているのに、水月の表情は晴れない。
それはタイムのせいだった。
2位の選手とのタイム差の事じゃない。茜自身のベストタイムから見ると、かなり悪い
タイムだったのだ。
「そう言われてみるとそうかもしれないが、トップなんだからそんなに悲観的になることは
ないんじゃないか」
孝之の言葉にも一理ある。
しかし。不安は拭い切れない。
それは、かつて水泳選手だった水月だから、感じることなのかもしれなかった。
「ちょっと散歩、してくる」
「……俺も行く」
理由は何も聞かずに、孝之は立ち上がった。
「うん」
水月はうれしそうに頷いて、ゆっくりと歩き出した。
エレベーターで地上に降りて、中庭に向かって歩いて行く。
中庭には大きい人工の池があり、水月は池のそばまで近づいた。
池の水面には、ぽっかりと丸い月。それはゆらゆらと揺れ動き、まるで心の不安定さを
示しているかのようだった。
「私、不安なときはよくこうやって月を見てた。水面に映る月を」
ぼそりと独り言を話すかのように、水月は語りだした。
「明鏡止水っていうのかな。こうやって揺れる月を見ていると、だんだんと心が静かに、
透き通っていくような気持ちになるの。夜のプール、誰もいない静かなプールでぼんやり
月を見ていたっけ……」
それきり、水月は無言で月を見つめる。
孝之もそれに習うように月を見つめていた。
その光景は、まるで神さまに祈りをささげるかのように。
静かに、静かに、ふたりは月を見つめていた。
茜、明日は思いっきり泳ぎなさい。
水月は、心の中でそっと呟いた。
あとがき
PCゲーム「君が望む永遠」のSSです。
ヒロインの速瀬水月の聖誕祭後夜祭用&水橋かおりさん聖誕記念も兼ねてます。
実はこのお話、もうちょっとだけ続きます(笑)。
この後の「茜オリンピック決勝編(仮)」と「オリンピックの後(仮)」の2場面分は少なくとも
書きたいと思います。
なんだか、予定より長くなってきました。
できるだけ早く、続きを書きたいですね。
それでは、また次の作品で。
��004年8月28日 水橋かおりさんのお誕生日♪
2004/08/27
「決心」(君が望む永遠)
空はとてもきれいな青色。雲はひとつもなく、済みきっていた。
「今日は洗濯物がよく乾きそうだわ」
洗ったばかりの洗濯物を丁寧に干しながら、水月は呟いた。
天気がいいからだろうか。その声はとても弾んでいた。
「よしっ、これでラストね」
最後の洗濯物を干し終えた水月は、額ににじんだ汗を手でぬぐった。
まだ夏と言うには早い時期だが、気温はすでに夏そのもの。
プールで思う存分泳ぎたいな…と思うのは、ごく自然な考えだと言える。
でも、たとえプールに行っても、昔のように泳ぐことはもう、ないんだ。
そう考えると、少し寂しい気持ちになる。
「でも、これは私が選んだことだから」
しっかりとした口調で自分に言い聞かせるように、水月は呟いた。
「さってと! 買い物に行こうかな」
少し沈んだ気分を打ち消すかのように、水月は鏡に向かって自分のトレードマークとも
いえるポニーテールを結い直した。
じりじりじり。
そんな音が聞こえそうな陽射しの中を、両手いっぱいに荷物を持って歩く。
「あ、つぅ~……」
太陽で熱せられた地面からは、ゆらゆらと陽炎が立ち上っている。
途中、喫茶店で涼んでいこうかと思う誘惑を振り切って、水月はようやく自分の部屋に
辿り着いた。
「はー、汗でベトベトだよ。シャワーシャワーっと」
部屋のエアコンのスイッチを入れて、水月はシャワーを浴びにバスルームに入った。
数分後、茹だっていた頭も冷水シャワーのおかげですっきり。部屋もエアコンのおかげ
で快適な温度になっていてさわやか。
バスタオル一枚を身に着けただけの水月は、冷蔵庫からキンキンに冷えた飲み物を取り
出して、ごくごくっと一息に飲み干した。
「あ~もうっ、さいっこう!」
先ほどまでのぐったり感はどこへやら。すっかり元気を取り戻した水月は、買ってきた
荷物の整理を開始する。
食料品を最優先で冷蔵庫へ片付けた後は、日用品をそれぞれの場所へ。
あらかた片付けが終わって残ったのは、何種類あるだろうか、たくさんのスポーツ新聞
だった。
「思わず全種類買っちゃったよ。まあ、孝之も読みたいだろうし、いいよね?」
適当にひとつ取ってみる。まず最初に飛び込んできた見出しには、こう書いてあった。
『涼宮、アテネオリンピック代表決定!!』
別の新聞には、
『涼宮茜、金メダル確実か?』
といったように、どの新聞も茜のことでいっぱいだった。
「すごいよね、ほんと……」
中学の頃は結構やるかな? ってぐらいだったけど、白陵に入ってからも茜はずっと水
泳を続けていたらしい。その努力もあって、ぐんぐん実力をつけて、白陵卒業と同時にア
メリカにスポーツ留学。
日本とは比べ物にならないくらいの良い環境、良い指導者に恵まれて、さらにレベルアッ
プ。
ここ数年、いろいろな国際大会に出場しては良い成績を納め、今回晴れて、アテネオリ
ンピックの代表に選ばれたのだ。
「それも私とおんなじ、100メートルの自由型だもんなあ」
私が目標にしていたオリンピック。そして、果たせなかった夢……。
私の代わりに、茜が夢をかなえてくれる。
そう考えてしまうのは私の自分勝手な思い込みなのかもしれないけど、茜にはがんばっ
てほしいと思う。
ひとつひとつの新聞を、時間をかけて丁寧に読んでいく。
新聞に写っている写真の茜は、あの頃よりも凛々しさが増して、可愛さが増して、とて
も素敵だった。
もう、何年茜に会っていないだろう?
私から会いに行く勇気は持てなくて、今日までずるずると来てしまっている。
時間は、痛みや悲しみを癒してくれるのかもしれないけど、最後の1歩は自分で踏み出
さないとどうにもならない。こればっかりは誰かに背中を押してもらうわけにはいかない
から。
熱心に新聞の記事を読んでいると、ふとある記事に目が止まった。
「……あ……あかねぇ……」
ぽたっ
新聞の上に水滴が落ちた。
それは、水月の目からこぼれ落ちた涙の滴だった。
『――私に水泳のすばらしさを教えてくれた先輩がいたんです。
私は、その人に追いつこうと、追い越そうとずっと努力してきました。
今回の結果はそのおかげだと思っています。
今でもその先輩は私の人生の目標です。
たぶん私は、今でもその人の背中を追いかけて、泳いでいるんだと思います……』
孝之が帰ってきた。
孝之も新聞を探してあちこちまわったみたいだったけど、やはり手に入らなかったよう
だ。
私が買ってきた新聞を読むと、孝之も目を潤ませていた。
「そうだよ、水月――これ……」
そう言うと孝之は突然、手に持っていた紙袋を私に向かって放り投げた。
「え?……なに……?」
困惑しながら、私は受け取った紙袋を開いてみた。中には1冊の絵本が入っていた。
『ほんとうのたからもの』
それが絵本のタイトルだった。そして、隅のほうに書かれていた作者の名前は、
『むらかみ はるか』
……はるか? …………はるか…………遙!?
「これ……もしかして」
「……ああ、多分」
頷く孝之。私はもう1度表紙に目を落とす。
遙が、描いた絵本だ。おそらく、たぶん。
茜とも会っていなかったように、遙ともあれ以来1度も会ったことはなかった。
お互いの気持ちに整理がつくまで。
そんなきれいな理由ならまだよかった。
私は、ただ遙に会うのが怖かっただけだ。
病院であんな別れ方をしたから、なんてのは都合のいい言い訳にすぎない。
遙ともう1度向き合うのが、私は怖かっただけなんだ……。
「そっか、遙……ちゃんと夢、かなえたんだ……」
私は意を決して、絵本を開いた。
…………。…………………。
ぽたっ
絵本の上に水滴が落ちた。
それは、私の目からこぼれ落ちた大粒の涙だった。
「孝之、私行くよ」
「行くって、どこに?」
「アテネ。アテネに行って、茜の応援をする。そして、茜と遙に会う」
そう、私は決心した。
私はアテネに行く。
私は、遙と茜に会いに行く。
あとがき
PCゲーム「君が望む永遠」のSSです。
ヒロインの速瀬水月の聖誕祭用です。
実はこのお話、まだ続きます。
この後の「茜オリンピック編(仮)」と「オリンピックの後(仮)」の2場面分は
少なくとも書きたいと思います。
できれば28日に続きを発表したいところではありますが、さてどうなりますやら。
それでは、また次の作品で。
��004年8月27日 速瀬水月さんのお誕生日♪
2004/07/07
「那波の夏」(水月)
水面にぼんやりと映っているのは丸い月。そう、満月だった。
空を見上げると雲はなく、星がたくさん輝き、月はくっきりと丸い。
しかし水面の月は、ちょっとしたそよ風にさえ揺らいでしまう。
そんな不安定さは、まるで、人の心のようだ、と私は思った。
ちゅんちゅんとさえずる小鳥たちの鳴き声、カーテンの隙間から差し込んでくる太陽の
光。
「朝……か」
気が付けば、朝だった。
カーテンを開けると、あざやかな入道雲が見えた。
7月になったばかりだというのに、季節はすっかり夏。
太陽がまぶしくて、日差しが強くて、風が心地よくて、星がきれいな、夏。
今年もまたこの季節がやってきた。
「あ、牧野さーん」
透矢くんの家に向って歩いていると、後ろの方から私を呼ぶ声が聞こえた。
彼女は小走りで私のそばまで来ると、にっこりと笑った。
「おはよう、花梨ちゃん。今日もいいお天気だねー」
「おはよ。天気がいいのはいいけど、暑すぎよね~」
花梨ちゃんは胸元に手で風を送り込みながら答える。
チラチラ見える胸元。覗くつもりはなかったんだけど、ふと見えてしまった。
……むー。思わず渋面になってしまう私。
そんな私の様子に気がついたのか。花梨ちゃんが私の顔を覗きこんで、
「どうかしたの?」
と尋ねてきた。
「うん。……花梨ちゃんの胸は順調に育ってるなあ、と思って。私は……もうダメなのか
なあ」
むにゅっ、と私は自分の胸を触ってみる。……むー。
「あはは……。順調なのかはさておき、牧野さんだって小さいわけじゃないでしょ?」
じーっと私の胸を見ながら花梨ちゃんが言う。
「でも、花梨ちゃんには負けてると思う……」
しょんぼりする私を見て、花梨ちゃんは急にいいことを思いついたような顔をした。
「ん? どうしたの、花梨ちゃん。……なんかすごく嬉しそうなんだけど」
それに、そのわきわきと動かしている手がすごーく気になるんですけど。
「いやあ、よく言うじゃない。胸は揉まれるとおっきくなるって」
じりじりと近づく花梨ちゃん。同じように、じりじり後ずさる私。
「どうして離れるのかなー? 痛くしないからさぁ……」
そんな事言われても、困るよ。というわけで。
「じゃ、じゃあ私は先に行くね!」
と言うが早いか、私は花梨ちゃんに背を向けてダッシュ!!
「あ、待てー!」
同じく、私を追いかけてダッシュする花梨ちゃん。
朝から熾烈な逃亡劇が幕を開けたのだった……。
ガラガラガラガラ
「お、おはようございま~す……」
「暑い暑い暑いーーーー!!」
玄関の扉が開く音。
「おはようございます。那波さん、花梨さん」
しばらくすると、雪ちゃんがいつもの笑顔を携えて玄関まで来てくれた。
ここは透矢くんの家の玄関。雪ちゃんは透矢くんの家のメイドさんだ。
雪ちゃんは可愛くて、きれいで、お料理が上手で……尚且つ、胸は花梨ちゃんよりも大
きい。……むー。
「あら、どうかされましたか。那波さん?」
雪ちゃんが私たちを見て、不思議そうな顔をする。
「う、ううん。なんでもないよー」
あわてて手を振って、大丈夫さをアピールする私。
「……でも、おふたりともすごくお疲れのようですけど。息も上がってらっしゃるようで
すし。それに、花梨さんは…」
ふと隣を見ると、あれ、花梨ちゃんがいない。
「今しがた、台所の方まで歩いて行かれましたけど」
……え?
「うわっ、花梨? なんでこんなとこまで上がってきてるんだ?」
「あ、透矢おはよー。……ごくごくごく。ぷはーっ! いやね、ちょっと朝から疲れちゃっ
たから、お水でももらおうかなって」
…………。
台所のほうから、透矢くんと花梨ちゃんの話し声が聞こえてきた。
「あはは……。ごめんね、雪ちゃん」
ぺこり、と私は雪ちゃんに頭を下げた。
「いえ、那波さんが謝ることではありませんよ。それより、那波さんもお水いかがですか?
幸い今日は、まだお時間の方も余裕があるようですから」
時計を見ると、確かにいつもよりもまだまだ時間に余裕はある。私と花梨ちゃんが全速
力で透矢くんの家まで走ってきたためだ。
「そうだね。じゃあ、いただこうかな」
「はい。ではこちらへどうぞ」
雪ちゃんはにっこりと笑って、台所まで案内してくれた。
こくこくこくこく……こくん。
雪ちゃんが出してくれたお茶を飲んで、私はようやく落ち着いた。
「それにしてもさー、牧野さんがいきなり逃げ出すから悪いのよ」
すると、私がお茶を飲み終わるのを待っていたかのように、唐突に花梨ちゃんが喋りだ
した。
「だから、ついつい追っかけちゃってさー。まだ7月になったばっかなのに、何? この
暑さは。こんな暑さの中を追っかけっこしちゃったじゃない!」
雪ちゃんが注いでくれた2杯目のお茶をごくごくごくーっと一気に飲み干しながら花梨
ちゃん。
「あ、あれはほら。花梨ちゃんが……その、怖かったから」
おずおずと答える私。
「どうせ花梨がいたずらでもしようとしたんだろう?」
透矢くんがそう言ってくれた。
「いたずらって人聞きが悪いわねー」
まだ暑いのか、花梨ちゃんは胸元に手で風を送り込みながら答える。
「…げほっげほっ!」
突然、透矢くんが咳き込んだ。ちなみに、透矢くんは花梨ちゃんの正面に座っていたり
する。
…………。
どうして咳き込んだのかはとりあえず置いておいて。
「だって」
私は花梨ちゃんに反論する。
「だって、花梨ちゃんが私の胸を揉み揉みしようとするんだもん!」
ぶはーーーっっ!!
その瞬間、盛大に透矢くんは飲んでいたお茶を吹き出した。
「あらあら、大丈夫ですか」
雪ちゃんが手際よく後始末を始めた。さすが雪ちゃん、メイドの鑑。
「なによー、いいじゃない。減るもんじゃないし」
ぶーぶーと文句を言う花梨ちゃん。
「だって」
思わず私は叫んでしまっていた。
「だって、どうせなら透矢くんに揉み揉みしてほしいんだもんっっ!!!」
その瞬間、透矢くんは死にそうなまでにむせ返った。
雪ちゃんは冷静に後始末をしてから、
「あら、透矢さん。ネクタイが曲がっていますよ?」
ぐいいーー。
「あ、ちょっ……雪さん締まってる締まってるっ…」
透矢くんはちょっと苦しそうだ。
「ダメよ雪。ほら、ネクタイが曲がってるよー」
ぐぐぐいいいいーーーー。
「か、花梨。それ、ダメ……」
透矢くんはちょっと、いやかなり苦しそうだ。
「ほら、そろそろ行くよー。じゃあ雪、お茶ありがとねー。牧野さんも行くよー」
花梨ちゃんはネクタイごと透矢くんを引っ張っていった。
「あ、うーん。じゃあ雪ちゃん、お茶ごちそうさまでした。行ってきます」
「はい、行ってらっしゃいませ」
ぺこり、と雪ちゃんは笑顔を絶やさぬまま、私たちを見送ってくれた。
さすが雪ちゃん、メイドの鑑。
私は雪ちゃんに手を振って、花梨ちゃんと透矢くんの後を追った。
玄関を出ると、さっきよりも高くなった日差しが私たちを出迎えた。
「まだまだ暑くなりそうだねー」
「そうね。それじゃはりきって今日も行きましょうか!」
「その前に、ネクタイを引っ張るのをやめてもらえると助かるんだけど……」
私たちの夏は、まだ始まったばかりだった。
おわり
あとがき
PCゲーム「水月」のSSです。
ヒロインの牧野那波の聖誕祭用です。
うーん、こんな内容でいいんでしょうかね?
書いてて楽しかったと言えば楽しかったんですけど(笑)。
それでは、また次の作品で。
��004年7月7日 牧野那波さんのお誕生日♪
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